哲学(てつがく)的なテーマに真正面から向き合い、歴史と個人の体験をバランスよく組み合わせた見事な意見文でした。文章の深さと構成力がすばらしいです。

【総評】
 「集団の対立をなくすべきだ」という主題に対し、抽象(ちゅうしょう)的な視点と具体的な事例を織り交ぜながら、冷静にかつ説得力をもって展開されています。歴史的事例を根拠(こんきょ)とすることで論旨(ろんし)に重みを加えつつ、身近なエピソード(Lineでの喧嘩など)で読者の共感を得る工夫もなされています。名言の引用や主題の一般(いっぱん)化、自作名言の工夫もあり、高校一年生として非常に完成度の高い一文です。

【段落ごとの講評】

■第一段落(当為(とうい)の主題)
 冒頭(ぼうとう)から哲学(てつがく)的な視点を用いた「裏切り者と犠牲(ぎせい)者」という刺激(しげき)的な言葉選びが読者の興味を引きます。「内部を律する緊張(きんちょう)」という表現も鋭く(するどく)、論の出発点としての主張がしっかりと立っています。抽象(ちゅうしょう)的な内容を「私は〜すべきだと思う」と明確な意見に結びつけた点がよくできています。

■第二段落(方法1:共通の敵でなく目標を)
 歴史的実例(ロシア帝国(ていこく)、ナチス・ドイツ)と、現代の具体例(部活動の目標)との対比がとても効果的です。重厚な事例を扱い(こい)つつ、適度に高校生の身近な場面へと落とし込ん(おとしこん)でいる点が高く評価できます。「共通の敵による結束は持続しない」という分析(ぶんせき)も的確でした。

■第三段落(方法2:対話と歩み寄り)
 「国家間の交渉(こうしょう)」と「友人とのLineでの誤解」を対比させることで、立場の違い(ちがい)にかかわらず「対話の重要性」を普遍(ふへん)的に描け(えがけ)ています。ユーモアというより、親しみやすい失敗談を上手に使って、自分の姿勢を素直に伝えている点が好印象です。

■第四段落(主題再提示・自作名言)
 「対立は忌む(いむ)べきものではなく、向き合うべきものだ」という名言の引用と、そこから導かれる「意地を捨てる」という結論が見事でした。「謝ることができる人間でいたい」という自己の決意で終えており、文章に(しん)があります。

【特に優れていた点】
・歴史実例の選び方と具体性(日()戦争、ナチス、満洲外交)
・論理と感情のバランス(個人的体験の活用)
・主張の一貫(いっかん)性と説得力
・読者を引きつける書き出しの構成力
・「向き合うべきもの」などの光る表現

【考えを深めるための質問】
 あなたがもし、実際に対立するグループの仲介(ちゅうかい)役になったとしたら、どんな「共通の目標」を提示して対立を乗り越えよ(のりこえよ)うとしますか? また、その目標はどうすればみんなが「自分ごと」として受け止められると思いますか?
 


■思考語彙 23種 27個 (種類率85%) 85点
 確か, 第,。しかし,。つまり,あるはず,あれば,いくべき,がため,ことによって,するべき,だろう,と思う,な一方,は可能,を考える,勢力に対して,向き合うべき,少なからざる,忌むべき,捨てるべき,目標によって,考えるば,証明により,

■知識語彙 83種 119個 (種類率70%) 95点
一因,一目瞭然,不満,両国,中国,交渉,人気,人物,人間,以上,以前,全国,共通,内部,出場,分断,利害,勢力,友達,同士,喧嘩,国家,増幅,外交,大会,大日本帝国,姿勢,学校,完成,完結,実権,対立,対等,対象,帝国,必然,意味,意地,意欲,感情,戦争,手法,持続,放棄,政治,敵対,文化,方法,日本,末期,根本,構成,模索,歴史,民衆,永遠,泥沼,活動,活字,犠牲,現代,疲弊,目標,直接,相反,相対,禍根,立場,素直,結束,結果,緊張,背景,自分,自己,行為,解決,言葉,証明,誤解,論理,譲歩,集団,

■表現語彙 131種 206個 (種類率64%) 87点
 確か,あるはず,いたずら,がため,こと,これ,それ,たち,とき,は可能,もの,よう,コミュニティー,ナチス,ホロコースト,ロシア,一,一つ,一因,一目瞭然,上,不満,両国,中国,二,交渉,人,人々,人気,人物,人間,以上,以前,全国,共通,内,内部,出場,分断,利害,勢力,化,友達,同士,喧嘩,回,国家,場,増幅,外交,大会,大日本帝国,姿勢,学校,完成,完結,実り,実権,対立,対等,対象,帝国,必然,意味,意地,意欲,感情,憎しみ,戦争,手法,持続,放棄,政治,敵,敵対,文化,方,方法,日,日本,時,末期,根本,構成,模索,歩み寄り,歴史,民衆,永遠,泥沼,活動,活字,犠牲,現代,疲弊,的,目標,直接,相反,相対,禍根,私,立場,素直,結束,結果,緊張,考え方,者,背景,自ら,自分,自己,蟠り,行為,裏切り者,解決,言葉,証明,話し合い,誤解,論理,譲歩,道,部,長続き,間,際,集団,露,非,

■経験語彙 40種 56個 (種類率71%) 79点
あう,うる,しまう,せる,たまる,つくる,できる,とける,とる,と思う,なくす,られる,れる,を考える,伝わる,使う,向き合う,強める,律する,得る,忌む,捨てる,握る,残す,深まる,深める,生まれる,生み出す,裏切る,見せる,設ける,話し合う,話し合える,話す,謝る,起こる,違う,選ぶ,集める,高める,

■総合点 90点

■均衡点 4点
 

集団の融和
   高1 あうては(auteha)  2025年5月2日

 一つの集団は、一人の裏切り者と、一人の犠牲者を生み出すことによって完成される。つまりその時、集団は論理的に構成されるのである。「裏切る」という行為は相対的であり、それは永遠に対象化できるものではないがために、集団は内部を律する緊張を持続させることができるのだ。内部勢力に対して緊張しあったとき、その集団は、集団として自己完結することを選びつつあったのだ。私は、集団間の対立をなるべくなくしていくべきだと思う。

 第一の方法は、集団を結束させるのに、共通の敵ではなく共通の目標をつくることだ。歴史上、一つの国家において、民衆の不満がたまりにたまる、あるいは一人の人物が政治の実権を握る際に、共通の敵をつくって集団の結束を強める、もしくは人気を集めるという手法はよく使われてきた。日露戦争も、ホロコーストも一因の一つはこれである。しかし、その手法をとった集団、または国家は往々にして長続きしないことは歴史の証明により一目瞭然だ。ロシア帝国然り、ナチス然りだ。敵対集団をつくることによって憎しみが増幅しあい、次第に人々は疲弊していくことを考えればある意味必然的な結果である。よって、私たちは日本の学校の部活動のように、全国大会出場といった共通の目標によって集団の結束を高めていく方が良いのではないか。

 第二の方法は、対等な立場で話し合える場を設け、歩み寄りの姿勢を見せることだ。学校内など狭いコミュニティーにおける集団の対立では、互いに話し合い、利害の相反があったとしても、譲歩の意欲さえあれば解決することは可能だろう。国家間など文化や考え方、背景などが全く違う集団同士では根本的な解決とまではいかなかったとしても話し合いによる実りは少なからずあるはずだ。少なくとも、大日本帝国の末期における中国外交のような一方的な交渉はいたずらに対立を深め、泥沼化させ、現代にまで両国に禍根を残してしまうことになる。私も、Lineで友達と話していて、活字ではどうしても感情が伝わりにくくて誤解が生まれ、喧嘩をしてしまったことがあった。しかし、一回直接きちんと話し合ってみたら蟠りがとけ、以前よりも親しくなることができた。

 確かに、人間である以上、対立は起こりうるものだ。しかし、「対立は忌むべきものではなく、向き合うべきものだ」という言葉があるように、感情的になり解決の道を自ら放棄してしまっては得るものも得られなくなり、分断は深まってしまう。捨てるべき時には意地を捨て、解決の道を模索するべきだ。私も、自分に素直になって自分に非があるときはきちんと自分から謝りたい。