面白い先生
    ()  年月日

 私がこれまでに出会った先生の中で、最も印象に残っているのは、三年生の時の算数科の先生、近藤先生だ。ドッジボールが大好きで、素早い球を投げ無双していた。よく皆の顔面にボールを的中させ、泣かれては誤っていた。ある先生の顔面にも当て、その先生のコンタクトレンズが外れてしまった事件もあったそうだ。でも、授業も面白くて、毎回冗談を言いながらみんな笑いながら楽しく授業をしていたのだ。算数科の先生なだけあって、とても内容が分かりやすく算数が苦手だった私でも期末テストではいい点をとることができた。

 近藤先生の授業の一番の特徴は、「脱線」が多いことだった。例えば、算数で割り算の授業をしていた時、図で表す説明から突然、「今日の昼休み、〇〇のボール早かったな。〇〇のよけ方もナイスだった。」と話し始めた。急に話が変わり、みんな目を丸くしていた。まるで新種の動物でも見つけたようだった。その後先生の「ドッチボールじゃなくてドッジボールだからね」などドッジボールへの愛が止まらず喋っていた。しばらくすると満足し、授業を再開した。いくら分かりやすい授業でもこの日だけは話が入ってこなかった。いつも、話を脱線しているわけではなく、先生の話はしっかりと算数の知識にもつながっていた。テストで使えるような裏技や、テストに出てくるような難しい問題でも一人一人空き時間に教えてくれたのだ。

 先生は授業中だけでなく、日常会話でもユニークだった。給食の時間に「なんでわざわざ面倒くさい計算式作ったのだろうね。」とか、「つるかめ算とか意味わかんないよね。方程式でいいじゃない。」と、なんとも小学三年生にはわけがわからない話をしてくる。授業中でも、目当てを書くときわざと習っていない漢字を書いて、みんながまだ習っていませんと言うのを待ち構えている。先生は毎回みんなにまだ子供だねって煽るのが好きなのだ。当時は皆で分かりますしといって対抗していたが、それが先生は面白かったそうで腹を抱えて笑っていた。最初は変な先生だなと思っていたけど、関わっていくうちに面白くていい先生だなと思うようになった。

 私が算数を好きになったのも、近藤先生のおかげだと思う。ただ公式を覚えるだけだったら、きっと私は今でも「算数=つまらないもの」だと感じていただろう。でも、近藤先生が教えてくれたのは、算数の「楽しさ」だった。昔の人が知恵を振り絞って作った計算方法を今も私たちが同じように活用していることを教えてくれた。面白い先生とは、ただ冗談を言う先生のことではないと思う。生徒にとって「学ぶこと=楽しいこと」だと感じさせてくれる先生こそが、本当に面白い先生なのだと思う。近藤先生は私たちの担任を終わるとともに転勤していってしまったが、噂によると私たちが中学一年生になったときに帰ってきてくれるらしい。近藤先生との出会いは、人生を大きく変える力を持っている。私は将来、近藤先生のように、人の心に残る、面白くて誰かに笑顔を届けられる人になりたいと思っている。