モノの良しあし
中2 あおらえ(aorae)
2025年6月2日
家具にとって百年とは、短い期間と言える。もし壊れても、無垢の天然木を使っていれば少し修理しただけでまた使うことができる。そして、十年たっても価値が下がることはなく、むしろそれほど使い込んだほうが良くなる。それに比べ、車や家電製品のほとんどは十年以内の寿命である。そしてそれが尽きた後は大体の場合鉄くずの価値しかない。また、無垢の木でできた家具にとって経済面から考えた効果が最も重要な要素ではない。それらを生活の中に入れてみると、人の意識が変わる。木は、種から発芽して数百年から数千年生きる生命力を備えている。また、自らの体を少しずつ大きくするという生産活動をしている間、周りの環境を悪化させない。動物には全く見られないことであり、この期の生き方こそ、人間は学ぶべきだ。
昨今、人類の技術レベルは確実に上がってきているだろう。例えば曲げられるぺブロスカイト太陽電池が発明されたり、空飛ぶクルマが開発されたりしている。これらは基本的に現在の問題とされている地球温暖化や渋滞の対策、対応策として使うことができる。つまり、現代社会に合っているということだ。だから、新しいものは良い。JR東日本は東北新幹線用にE10系を開発すると発表した。最高時速350kmを目指すらしい。実現すれば、現行の車両よりも時速30km速くなる。さらに、米トランプ大統領は陸上での超音速飛行の禁止を撤廃するよう命令した。さらに、米ベンチャー企業Boomは超音速旅客機の初飛行をすでに成功させ、2029年度を目標に開発中だとしている。太平洋横断は4時間30分ほどとなり、現行の約10時間よりも大分短縮される。
ただ、古い物に良さがないということではない。古い物にも古い物なりの良さがある。だから、インターネットを使ったら一瞬で相手に届くというのに日本にはお正月になると年賀状を送る慣習がある。アンデルセン童話に小夜啼鳥、またはナイチンゲールという話がある。中国の皇帝はある日ナイチンゲールの歌声に感動したためナイチンゲールは宮中で暮らすことになるが、ある日機械仕掛けのナイチンゲールが送られてくる。皇帝はこれを気にいったが、一年後に壊れてしまった。そして皇帝が重病にかかった時、誰もが死ぬものだと思っていたが本物のナイチンゲールが歌声を聞かせ、回復したという話だ。機械仕掛けのものよりも自然の、本物のナイチンゲールが一番だ、と教えてくれる。
新しい物も古い物もそれぞれの良さがあり、単純には比べられない。新しい物は確かに時代に合っているが、懐かしさは感じられない。古い物に懐かしさは感じられるが、しかし不便な時代に合わない代物も多い。だが、柳宗悦は「物にも心がある。粗末に扱えば物も悲しむ。」といった。最も大切なことは、新しい物・古い物にかかわらず、今あるものをできる限り大切に使っていくことではないだろうか。どちらであっても、大切に使わなければ宝の持ち腐れである。どちらも最大限つかってこそ、良しあしがわかるはずだ。そうでないと、「物も悲し」んでしまう。