論理的思考と直感的思考、それぞれの良さを具体的な実例とともに対比させた、読み応えのある意見文でした!

<<え2015/139pみ>>

【総評】
 全体を通して、複数の実例を効果的に取り入れながら、論理と直感の両方の価値を的確に述べることができていました。事前指導である「四段落構成」が明確に守られており、各段落の役割がはっきりと分かります。特に最後の段落で、「実行することの大切さ」へとまとめた構成は見事です。

【段落ごとの講評】
●第1段落:長文の要約にあたる内容であり、「科学と感性」「論理と直感」というテーマの導入として非常に完成度が高いです。実際の研究例を紹介(しょうかい)しながら問題意識を浮き彫り(うきぼり)にし、「科学教育の落とし穴」という主張にもつなげていて説得力があります。

●第2段落:論理的思考の良さを説く部分で、具体例として童話を用いたのが秀逸(しゅういつ)です。文化や時代を超え(こえ)て通用する論理の価値を、「三(ひき)の子(ぶた)」という分かりやすい題材で伝えており、読者の共感を得られます。

●第3段落:直感的思考の良さについて、科学史と心理学実験という二つの例を並列で扱っ(あつかっ)ていて、視野の広さが感じられます。情報を的確に整理し、結論(直感も有効)を導いている点も評価できます。

●第4段落:最後のまとめが非常に力強く、「実行こそが思考の意味を持たせる」という主張が、これまでの三段落を統合する形で示されています。マーク・ハードの名言を効果的に引用し、自分の意見を明確に述べる姿勢が素晴らしいです。

【特に優れていた点】
実例の選び方(科学、童話、心理学)に(はば)があり、説得力を高めていたこと
論理と直感を単に対立させるのではなく、実行に向けての補完的役割として統合した構成
難解な内容も中学生らしい語彙(ごい)でわかりやすく説明していた点
主題に対して自分の考えを丁寧(ていねい)に展開し、最後までぶれることなく貫い(つらぬい)ていたこと

【考えを深めるための質問】
 もしあなたが大きな決断をしなければならないとき、論理と直感のどちらを先に使うと思いますか? そのとき、どんな「実行」に結びつけたいですか?
 


■思考語彙 25種 28個 (種類率89%) 90点
 一方, 確か,、しかし,、すなわち,。しかし,。だから,。例えば,あれば,ことに対し,するため,そのため,その考える,たため,たらしい,できるから,と思う,なければ,に考える,も場合,も思う,やるべき,れざる,分間考える,持つべき,見つければ,

■知識語彙 83種 120個 (種類率69%) 95点
三男,並列,事実,人間,具合,処理,分間,利益,効果,即決,同義語,固有,圧倒的,大切,大量,学問,学者,実業,実行,実験,容量,対応,展開,幻覚,建築,心理,必要,思想,思考,情報,想像,意味,意識,技術,指示,推理,提唱,提示,教科,教育,文化,日本,是非,時間,林檎,架空,様子,次男,正答,歴史,決定,深刻,無意識,煉瓦,熟慮,物事,現在,理解,理論,発祥,発見,目先,直感,直観,科学,童話,結果,結論,統合,緊急,自体,自分,英国,行動,規則,言葉,説明,課題,論理,過程,長男,頑丈,飛躍,

■表現語彙 142種 227個 (種類率63%) 92点
 確か,うえ,こと,これ,さ,するため,そのため,それ,それぞれ,たため,だれ,どちら,もの,も場合,よう,ら,オオカミ,オランダ,グループ,ダイクストラ,データ,ニュートン,ハウス,ハード,マーク,三,三男,上,並列,中,事実,人間,今,他,何,具合,処理,分間,別,利益,力,効果,匹,即決,台,同義語,固有,圧倒的,場,大切,大量,学問,学者,実業,実行,実験,家,容量,対応,展開,幻覚,庭,建築,形,後,心理,必要,思想,思考,情報,想像,意味,意識,技術,指示,推理,提唱,提示,教科,教育,数,文化,日本,是非,時,時間,書,木,林檎,架空,様々,様子,次男,正答,歴史,気,決定,深刻,無意識,煉瓦,熟慮,物事,率,現在,理解,理論,発祥,発見,的,目先,直感,直観,科学,童話,結果,結論,統合,緊急,考え,自ら,自体,自分,英国,落とし穴,藁,行動,規則,言葉,説明,誰,課題,論理,豚,車,通り,過程,違い,長男,順,頑丈,飛躍,%,

■経験語彙 41種 63個 (種類率65%) 80点
かかる,させる,しまう,せる,その考える,できる,とる,と思う,に考える,も思う,やる,られる,れる,与える,伴う,作る,使い分ける,働く,優れる,出す,分かれる,分間考える,取る,吹き飛ばす,基づく,得る,応じる,持つ,決める,知る,移す,育む,落ちる,薄れる,行う,要する,見つける,認める,起こす,鑑みる,限る,

■総合点 93点

■均衡点 4点
 

実行の過程
   中2 あおらえ(aorae)  2025年6月3日

  中央アルプスの高度2500メートル付近に生えているハイマツにいるマツキノハバチを大学の研究室で、摂氏二十五度を飼育温度として飼育すると、四日間ですべての幼虫が死に至った。翌年は一部幼虫を十六度で飼ってみるも、全滅した。三年目にふと閃いた。高山では昼と夜に大きな温度差があるから、ハバチは温度の振れに耐えられ、またそれを必要としているのかもしれない、と。実際に昼は二十五度、夜は五度という条件で飼育すると、ほとんど死ぬことなく繭を作った。しかし、学会で閃いたとは言えない。だから、データに基づいた論理的推理を展開する形をとる必要がある。これが、今までの科学と科学教育の落とし穴だ。科学も技術も、ずっと人間的なものだということを、深刻に意識することが大切だ。

 論理的思考はよい。論理的な教科・学問は比較的理解しやすく、またされやすいといわれる。論理の飛躍がなく、だれもが、文化の違いなく事実であると認められ、よって誰もが同じ結論を規則に従って出すことができるからだ。「三匹の子豚(The Three Little Pigs)」という英国発祥の童話がある。日本ではよく知られているが、長男が藁で家を作り、次男が木で家を作るが、どちらもオオカミに吹き飛ばされてしまう。しかし三男だけは頑丈な煉瓦で家を作ったため、オオカミに吹き飛ばされなかった。藁、木、煉瓦の順に建築に要する時間は長くなるが、しかしその順にオオカミに吹き飛ばされやすくなる。目先のことばかりに気を取られず、後の自分の得る利益も鑑みて現在のことを決定する、すなわち論理的な考えを持つべきだ。

 一方で直感的な思考もよい。直観的な思考には時間がほとんどかからない。だから緊急時には直観で物事を決めなければならなくなる。さらに、歴史上の発見は論理的思想だけが育んできたのではない。例えば、ニュートンは庭で林檎が落ちる様子を見て、何かの力が働いているのではないかと思ったらしい。オランダの心理学者・ダイクストラハウスらは「無意識思考効果」という理論を提唱している。これに伴った実験では、架空の様々な情報が与えられた数台の車の中で、他よりも圧倒的に優れているのを見つければよいとされ、熟慮グループ、即決グループ、直感グループに分かれさせた。熟慮グループは4分間考えるように指示され、即決グループはその場ですぐに決める。そして直感グループは情報を見た後に別の課題を提示させられる、といった具合だ。正答率は、それぞれ約25%、約30%、約60%だった。これは意識的思考が限られた容量しか対応できないことに対し、無意識な思考は並列的に、大量に処理できるからである。

 確かに、論理的思考と直感的な思考にはそれぞれの良さがある。それはどちらかに統合できるものではなく、それぞれ固有のものとなっている。そのため、そのどちらも場合に応じて使い分けることはとても大切で、是非ともそうやるべきであるとも思っている。しかし、「実行しなければ、想像とは『幻覚』の同義語となってしまう」という実業家のマーク・ハードの言葉がある。その言葉の通り、最も大切なことは、自分なりに考えたうえで実行に移すことだ。実際に行動を起こすことだ。自らの思考の結果を実際に行わないのであれば、その考えるという意味自体が薄れてしまう。論理的な思考と直感的な思考とは実行するための「説明書」を作っている過程に他ならないのである。