深いテーマに対して、文化や実例、引用をまじえながら、しっかりと自分の考えを伝えられていてすばらしいです。

<<え2014/140jみ>>

【総評】
 日本語文化とフランス語文化における赤ちゃん言葉や子育て観のちがいを、データや童話、名言を通して論じることで、非常に読みごたえのある意見文となっています。多角的に物事をとらえ、自分の主張に説得力を持たせる工夫が随所(ずいしょ)に見られました。主題の扱い(あつかい)方も丁寧(ていねい)で、最後にマザー・テレサの名言を引用し、感情と論理をバランスよくまとめています。

【段落ごとの講評】
第1段落:文化のちがいによって赤ちゃん言葉の使用法が異なることを客観的に説明し、主題の背景を的確に示しています。

第2段落:スタンフォード大学やUCLAの研究を引用し、日本式の子育ての有効性を科学的に裏づけており、意見の根拠(こんきょ)として非常に有効です。データを活用できている点は特に優れています。

第3段落:グリム童話『おやゆびこぞう』を引用することで、「子供を大人として扱う(あつかう)」考え方に説得力をもたせています。文学的な視点を加えた構成は、文章に深みを加えています。

第4段落:両方の子育て方法を認めつつ、最終的に「心を込める(こめる)こと」の大切さにまとめる着地が見事です。マザー・テレサの名言を自然に取り入れ、論理と感情を調和させた結論になっています。

【特に優れていた点】
・赤ちゃん言葉に関する文化的ちがいを客観的に分析(ぶんせき)している
信頼(しんらい)できるデータや研究を使って意見を補強している
・童話や名言を適切に引用し、表現力が豊かである
・主題を「心を込め(こめ)た子育て」という普遍(ふへん)的な視点で総合化できている

【考えを深めるための質問】
 赤ちゃん言葉の使用について、もし将来あなたが親になったとき、どのように接したいと思いますか? その理由もあわせて考えてみましょう。
 


■思考語彙 21種 23個 (種類率91%) 79点
 ただし, 確か,、しかし,、つまり,。しかし,。すなわち,。ただし,ことによって,ことにより,だと,に対して同様,よると,を思う,問わざる,変わらざる,子供に対して,年齢によって,成人に対して,文化によって,話す場合,赤ちゃんに対して,

■知識語彙 61種 105個 (種類率58%) 80点
不都合,世界,両方,中心,人物,会話,使用,修道,全員,共通,冒険,分析,判明,単語,同一,報告,増加,大事,大人,大切,大学,大差,夫婦,奇異,子供,存在,家庭,対照,左右,年齢,愛情,成人,成長,文化,方法,日本語,早期,時点,最初,歴然,母親,獲得,現象,環境,生活,用法,発話,相手,研究,童話,精神,結果,行動,要領,親指,言葉,言語,語彙,通常,過去,馬車,

■表現語彙 120種 201個 (種類率60%) 82点
 確か,か月,がち,こと,これ,これら,さ,そう,それ,それぞれ,たくさん,とき,ところ,どちら,どれ,に対して同様,ほか,もの,やゆ,よう,カ国,スタンフォード,スピード,フランス,フランス語,一,不都合,世界,両方,中心,人,人物,会話,何,使用,修道,側,全員,共通,冒険,分析,判明,前,単語,同一,周り,圏,報告,増加,大事,大人,大切,大学,大差,夫婦,奇異,女,子,子供,子育て,存在,家庭,対照,左右,差,年齢,彼,心,思い,愛情,成人,成長,文化,方法,日本語,早期,明らか,昔,時点,最初,様々,歴然,母親,牛,狐,獲得,現象,環境,生活,用法,男の子,疑い,発話,的,相手,研究,童話,米,精神,結果,群,自ら,行動,要領,親,親しみ,親指,言葉,言語,話,話し合い,話す場合,語,語彙,赤ちゃん,通り,通常,過去,量,馬車,

■経験語彙 36種 58個 (種類率62%) 73点
あらす,できる,とらえる,なす,ゆく,よる,られる,れる,わく,を思う,与える,付き添う,使う,切り抜ける,動かす,受け取る,合わせる,向かう,問う,営む,売る,変わる,好む,始まる,感じる,捉える,生まれる,異なる,聞く,行う,話す,話せる,語りかける,込める,連れ去る,飲み込む,

■総合点 85点

■均衡点 7点
 

愛情
   中2 あおらえ(aorae)  2025年7月2日

 赤ちゃんが事象を指して話す言葉であるが、日本語文化圏などにおいてこれら一群の単語は大人が赤ちゃんに向かって語りかけるときにもまったく同じ要領で使用される。しかし、同一の人物がほかの成人に対して同様に話す場合には相手はとても奇異に受け取ることは疑いない。しかし、それがフランス語文化でそれはほとんど聞かれないという。赤ちゃんに対しても、大人に対するのと大差ない言葉の用法を使用する。ただし、母親語は歴然として存在している。そもそもフランスでは子供中心の家庭生活を営みがちな日本語文化圏とは異なり、かなり著しい対照をなすことが多いようだ。すなわち、赤ちゃん言葉の現象は文化によって大きく左右される。

 日本語文化圏での子育て方法、つまり子供に大人を合わせる子育て方法は良い。子供の年齢によっても変わってくるが、最初は全員うまく言葉を話せないところから始まる。大人側が子供と話す言葉を共通なものとすることによって子側は何も不都合なく会話することができる。さらに、言葉を一にすることにより、より親しみを感じられ、より親の子に対する愛情がわく。米スタンフォード大学などの研究によると16カ国、2329人の赤ちゃんが通常の会話よりも赤ちゃん言葉を明らかに好むことが判明した。また、これを使用するときが多いほど、24か月時点の発話語彙量が増加したという分析結果もある。さらに、UCLAの研究ではモノリンガル・バイリンガル環境を問わずに早期言語獲得のスピードに差はないと報告されている。

 ただし、大人が子供を「小さな大人」として捉え、成人に対するのと変わらぬ語りかけを行うこともよい。グリム童話に「おやゆびこぞう」という話がある。昔、子供のできなかった夫婦に親指ほどの大きさの男の子が生まれ、様々な冒険をするというあらすじである。その冒険には人に売られそうになる、牛に飲み込まれそうになる、狐に連れ去られるといったものがあるが、おやゆびこぞうはそれらを切り抜けてゆく。その冒険に夫婦は付き添っていなかったが、しかし彼は話し合いをしたり、馬車を動かしたりと大人として捉えられ、またそう行動していた。そのように大人として周りからとらえられることで自らの精神的な成長が行われていく。

 確かに、子供に大人を合わせる子育て方法と、子供を大人に合わせる子育て方法のどちらにも、実際に両方が世界で使われている通り、それぞれの良さがある。しかし、修道女のマザー・テレサは過去に「大切なのは、どれだけたくさん与えたかではなく、どれだけ心を込めたかである」と言っていた。どれだけ赤ちゃん言葉を使って会話したのか、もしくはどれだけ子供に対して「大人の言葉」で語りかけたかは、子に対する愛情、子に対する思いの前ではそれほど大事でないと感じる。子育てにおいても、最も「大切なのは、どれだけ心を込めたか」だと、どれだけ子供のことを思ったのかであると。