人の気持ちに寄り添お(よりそお)うとする優しさと深い考察力が感じられました。とても素敵な文章です。

<<え2010/156み>>

【総評】
 「子どもへの接し方」について、日本とフランスの育て方を比較(ひかく)しながら、それぞれの良さをバランスよく述べており、説得力のある意見文でした。自分の体験を丁寧(ていねい)描き(えがき)ながら、そこから得た気づきをもとに主張を展開している点がとても優れています。最後に引用した名言も、文章全体をまとめるうえで効果的に働いていました。

【段落ごとの講評】
第1段落:文化人類学の視点を交えて、赤ちゃんことばと子育て文化について簡潔にまとめており、読み手の関心を引く書き出しになっています。

第2段落:日本的な子育ての良さを、自らの体験を通して具体的に示しており、共感を呼ぶ内容になっています。感情の動きがよく描か(えがか)れ、読み手に強く印象づける力があります。

第3段落:フランスの子育ての良さを具体的な行動例を交えて説明しており、子どもを一人の人間として尊重する姿勢が丁寧(ていねい)に表現されています。対比構造が明確で、読みやすさもあります。

第4段落:どちらか一方を優れているとするのではなく、子ども自身の意思を重視する姿勢が表れています。名言を引用して自分の考えを支えており、文章の締めくくり(しめくくり)として効果的です。

【特に優れていた点】
・自分の体験を活かして説得力を高めている
・複数の文化の違い(ちがい)を公正に比較(ひかく)し、両者の良さを認めている
・「子ども自身の意思が大切」という独自の視点をもってまとめている
・名言をうまく引用し、主張に深みを加えている

【考えを深めるための質問】
 あなたが将来、親や教育者になったとき、子どもが自分の意思をしっかり持てるように、どのような工夫をしたいですか?



内容◎ 構成◎ 題材◎ 表現◎ 主題◎ 表記◎

字数/基準字数:1282字/800字
思考点:79点
知識点:70点
表現点:76点
経験点:82点
総合点:83点
均衡(きんこう)点:6点

 


■思考語彙 21種 24個 (種類率88%) 79点
n確か,。しかし,。たとえば,。だから,。もちろん,「どうして,「なぜ,いるから,が考える,すると,するべき,せざる,だから,だろう,と思う,に思う,大人にとって,子どもにとって,扱わざる,時こそ,私にとって,

■知識語彙 47種 77個 (種類率61%) 70点
一番,丁寧,人間,仕方,他人,信頼,光景,出来事,名言,否定,命令,大事,大人,大切,太鼓,子供,安心,家庭,家族,対話,尊重,形成,役割,性格,意思,意見,感情,採用,文化,日本,日本人,物事,理解,目線,社会,秋田,納得,経験,自分,自立,自身,興奮,行動,衝撃,言葉,説明,食事,

■表現語彙 107種 194個 (種類率55%) 76点
n確か,あなた,こと,ことば,ころ,さ,そば,それ,それぞれ,たくさん,たち,とき,ところ,なん,びっくり,まつり,よう,ん,ガキ,セ,フラン,フランス,レストラン,一,一番,丁寧,中,人,人間,今,仕方,他人,何,例,信頼,光景,全て,出来事,別,力,名言,否定,命令,声,大事,大人,大切,太鼓,子ども,子供,子育て,安心,家庭,家族,対話,尊重,式,形,形成,役割,心,思いやり,性格,意思,意見,感じ,感情,採用,支え,文化,方,日本,日本人,時,母,気持ち,涙,温かさ,物事,理解,目線,社会,私,秋田,竿,笛,納得,経験,考え方,自分,自立,自身,興奮,薬,行動,衝撃,言葉,説明,誰,赤ちゃん,違い,関わり,静か,音,頭ごなし,食事,驚き,

■経験語彙 42種 64個 (種類率66%) 82点
が考える,くみとる,くれる,しつける,しまう,つながる,できる,と思う,なさる,に思う,はしゃぐ,られる,れる,伝える,促す,効く,受けとめる,叱る,合わせる,寄り添う,寄り添える,待つ,忘れる,感じる,扱う,抱きしめる,持つ,接する,教える,果たす,止まる,泣く,生きる,知る,立つ,聞く,育つ,育てる,見かける,違う,集まる,響く,

■総合点 83点

■均衡点 6点
 

自分の意思で
   中2 あえさし(aesasi)  2025年7月2日

 母親語ときわめて似ていながら非なるものとして、「赤ちゃんことば」という現象が広く流布している。文化人類学者の川田順造氏によるとフランス語文化では、赤ちゃんことばはほとんど聞かれないのだろう。た赤ちゃんことばを採用した日本式のしつけ方は、当然、日本文化で育つ子供の性格形成に大きな役割を果たしているに違いない。

 日本人のように、子供の目線に合わせた子育ての仕方はよい。 「日本人のように子どもの目線に合わせた子育てはよい」という考え方には、大人と子どもでは物事の感じ方が違うという理解があると思う。大人にとってはなんでもない出来事でも、子どもにとっては大きな衝撃となることがある。その気持ちをくみとり、寄り添ってくれることが、子どもの心の支えになるのだと思う。私が小さいころ、家族で秋田の竿燈まつりに行ったことがある。たくさんの人が集まり、太鼓や笛の音が響き、私にとってはとても楽しくて、つい興奮して大きな声ではしゃいでしまった。すると、そばにいた知らない大人に「うるさいガキだな」と冷たく言われた。だから私は驚きと悲しさで、思わず泣いてしまった。そのとき、母がすぐに私のところに来て、「びっくりしたね。でもあなたは悪くないよ。楽しかっただけなんだよね」と、優しく抱きしめてくれた。その言葉と温かさに私は安心し、涙が止まった。あのとき母は、私を叱るのではなく、私の気持ちに寄り添ってくれた。私の感じたことを否定せず、「楽しかっただけ」と受けとめてくれたことが、今でも忘れられない。この経験は、子どもの目線に立つ子育ての大切さを教えてくれた。私も、誰かの気持ちを理解し、寄り添える人になりたいと思う。

しかし、フランセのように子供を小さな大人として扱う子育てにも良さがある。それは、子供の意見や感情を一人の人として尊重し、頭ごなしに叱るのではなく、言葉でしっかり説明するという関わり方だ。たとえば、フランスの家庭では、子供がレストランで静かに食事をしている光景をよく見かける。それは、子供に「なぜ静かにするべきか」を納得いくまで説明し、子供もまた理解されていると感じているからだという。日本では「静かにしなさい」と命令することが多い。しかし、フランスでは「どうして静かにするのが大事か」を丁寧に伝える。もちろん、すぐに言うことを聞かないこともあるが、そういう時こそ少し待ってみて、子供自身が考えて行動するのを促すのだ。このように、子供を一人の人間として接することで、自分の意見を持ち、他人と対話できる力が育っていく。子供だからと軽く扱わず、尊重することは、やがて社会の中で自立して生きる力へとつながる。フランスの例は、子育てにおける思いやりと信頼の形を私たちに教えてくれているように思う。

確かに子供の目線に合わせた子育ても、子供を大人として扱う育て方もそれぞれの良さがある。しかし一番大切なのは「全てに効くという薬は、何にも、たいして効かない」という名言のように、どんな育て方でもそれが良いかは別として子供の意思がはっきりしていることが大切だ。