社会的なテーマに深く踏み込み(ふみこみ)、資料や文学を活用しながら自分の意見を展開していて、非常に読みごたえのある文章でした。

<<え2010/191jみ>>

【総評】
 「障害者支援(しえん)と自立」という難しいテーマを、複数の視点から丁寧(ていねい)掘り下げ(ほりさげ)ており、非常に完成度の高い意見文です。ローズマリ・サトクリフの実例やユージーンの街の姿を通して、「傷つけられる権利」や「経験する自由」について考察している点は、読者にも新たな視点を与え(あたえ)てくれます。さらに、国連の条約や科学的研究を引用して論理性を加えている点が特に優れており、比喩(ひゆ)や文学の引用も活かして、感情と論理のバランスが取れた文章になっています。

【段落ごとの講評】
第1段落:ローズマリ・サトクリフの人生とユージーンの町の描写(びょうしゃ)を通して、障害者にとっての「自由とは何か」という深い問いを提示しています。文学的な引用が非常に効果的です。

第2段落:国連の条約やサウジアラビアの研究結果を引用し、支援(しえん)の必要性とその影響(えいきょう)を論理的に説明しています。実証的なデータを取り入れている点が、文章に説得力を加えています。

第3段落:イソップ寓話を例にして「自立の尊重」の意義を語っており、文学的な比喩(ひゆ)と道徳的教訓が融合(ゆうごう)した優れた展開です。障害者の努力や志の尊さにも触れ(ふれ)ていて、感情面にも訴え(うったえ)かけています。

第4段落:哲学(てつがく)者の言葉や「銀の枝」の引用を通して、最終的な主張である「向き合う姿勢の大切さ」へと導いています。両立の難しさを正直に認めた上で、それでも対等な視点を持つべきだという締めくくり(しめくくり)が印象的です。

【特に優れていた点】
・文学・研究・条約など多様な資料を活用した多面的な論展開
比喩(ひゆ)や引用を活かした読みやすさと深みのある表現
支援(しえん)と自立の両立というバランスの難しさを認識した誠実な姿勢
・結論が一貫(いっかん)しており、「向き合い方」に主軸(しゅじく)をおいた主張が明快

【考えを深めるための質問】
 あなたが「向き合う姿勢」を大切にしたいと思うとき、具体的にはどのような言葉や行動がその姿勢を表すと思いますか? それを日常の中でどう実践(じっせん)していきたいですか?

内容◎ 構成◎ 題材◎ 表現◎ 主題◎ 表記◎

字数/基準字数:1400字/800字
思考点:90点
知識点:85点
表現点:84点
経験点:86点
総合点:94点
均衡(きんこう)点:8点

 


■思考語彙 25種 29個 (種類率86%) 90点
 しかし,、しかし,。しかし,。だからこそ,。同様,あきらめざる,この場合,すべき,するため,するべき,たため,でしょう,と,とれば,と思う,に考える,は確か,やり遂げよう,よると,人に対して,低いかも,勝とう,差し伸べるべき,挫けざる,立場によって,

■知識語彙 69種 117個 (種類率59%) 85点
不可欠,両立,主人,主張,以上,価値,傾向,判断,努力,効力,動作,参加,合理,哲学,国連,堅固,大切,奴隷,姿勢,実現,寓話,対等,尊重,平等,弱者,影響,彼女,志操,応答,息子,患者,意味,意思,成長,手段,支援,改善,日常,明記,時代,有名,条約,権利,次第,物事,特別,生活,直接的,研究,確認,示唆,社会,立場,競争,経験,結果,脳卒中,自信,自己,自由,著書,言葉,調査,道中,選択,配慮,間接,関係,障害,

■表現語彙 124種 225個 (種類率55%) 84点
。同様,うさぎ,かめ,こと,この場合,これ,さま,すべて,するため,それ,たため,たち,どちら,どれ,は確か,ほう,ほか,もの,よう,わたし,ん,イソップ,ウサギ,サウジアラビア,サトクリフ,マリ,ローズ,一,不可欠,両立,中,主人,主張,亀,人,人任せ,他,以上,何,価値,傾向,判断,力,努力,効力,動作,参加,合理,否,哲学,国連,堅固,大切,奴隷,姿勢,実現,寓話,対等,尊重,居眠り,平等,年,弱者,影響,彼女,志操,応答,息子,患者,意味,意思,感,成長,手,手段,扱い,支援,改善,日常,明記,時代,有名,本,条約,枝,権利,次第,歩,物事,特別,生活,的,皆,直接的,研究,確認,示唆,社会,立場,競争,経験,結果,者,脳卒中,腹,自ら,自信,自己,自由,著書,言葉,話,調査,足,道中,選択,配慮,銀,間接,関係,限り,障害,風,%,

■経験語彙 45種 60個 (種類率75%) 86点
あきらめる,える,くれる,しれる,す,すく,できる,とる,と思う,に考える,やり遂げる,ゆく,よる,られる,れる,与える,休む,位置付ける,作る,勝つ,勝てる,及ぼす,向き合う,呼ぶ,変わる,失う,差し伸べる,成す,扱う,持つ,挫ける,捉える,教える,歩く,決まる,生まれる,異なる,示す,積み重ねる,続ける,行う,読む,追い抜く,選ぶ,阻む,

■総合点 94点

■均衡点 8点
 

どう向き合うか
   中2 あおらえ(aorae)  2025年7月3日

  ユージーンは、街の中に障害者がいることで、人の流れが変わらない街、障害者と自然に向き合う街だった。イギリスのローズマリ・サトクリフの自伝には子供の時期から障害の持つ社会的な意味に気づき、「孤独」を知るまでが書かれている。彼女は第二次大戦の終結を境に一つの恋愛を経験している。両親は娘が傷つくことだけを恐れ、彼女も恋を「恋」として直視することを回避し、それは結局別離に終わった。「傷つけられる権利」と、彼女は呼んだ。この本を読んで障害者はずっと同じことを主張してきたのだと思った。障害者が経験を積み重ねてゆく自由をどれだけ阻むかは、その時代のその社会が、障害者をどう位置付け、その中で人と人との関係をどう作っているかで決まる。ユージーンの風は、そのことも教えてくれた。

 障害を持つ人には手を差し伸べるべきだ。国連の「障害者権利条約」には「障害者が他の者と平等に社会に参加するためには、合理的配慮が不可欠」と明記してある。支援を特別扱いではなく平等を実現するための手段として位置付けている。サウジアラビアで2023年に行われた脳卒中患者に対する研究がある。これは社会的支援と自己効力感が日常生活動作に与える影響を調査したものであるが、これによると社会的支援が直接的に日常生活動作に与える影響は確認されなかった。しかし、社会的支援は自己効力感を通じて間接的に日常生活動作に影響を及ぼすことが示唆された。また、社会的支援がある患者は自己効力感が高く、日常生活動作が20%以上改善する傾向が示された。

 しかし、障害を持った人たちが、自らの力でやり遂げようとする意思も尊重するべきだ。障害を持っていなくとも、すべてを他人任せにしていては成長できない。イソップ寓話には、特に有名な話で「うさぎとかめ」がある。ウサギと亀で競争をすることになった。ウサギは亀よりも速いという自信があったため道中で休んで居眠りをしたが、亀は確かに足が遅いが、しかし一歩一歩あきらめずに歩いて行った。その結果、亀がウサギを追い抜かして競争に勝ったという話である。この場合、亀は競争において弱者であると捉えられる。ただ、それでも挫けずに勝とうとして歩いたことで、結果としてウサギに勝てた。同様に、障害を持った人は社会的な影響力が低いかもしれないが、それでも自らの力で努力を続ける、志操堅固であることで結果的に大きなことを成しえる。

 障害を持つ人に対して、支援すべきか否かの判断はとても難しい。どちらかをとればどちらかが失われる、両立の難しいものだ。しかし、「物事の価値は姿勢次第で大きく変わる」という哲学者・ルドルフ・シュタイナーの言葉がある。実際にどちらを選ぶかは確かに難しい選択だ。しかし、それよりも大切なのは皆をできる限り対等に扱ったり、できる限り対等に考えたりすることである。ローズマリ・サトクリフの著書・「銀の枝」には「自由になったほうがいいんじゃないのかい?」「自由ですって? わたしは奴隷に生まれました。奴隷の息子なんです。自由というのは、ご主人さまがないということ、それに腹がすいているというほかにどんな意味があるんでしょうか?」という応答がある。そのように、何が「よいこと」かは立場によって大きく異なる。だからこそ、何を与えるかではなく、どう向き合うかが最も大切である。