所有に頼らない
中3 かののん(kanonon)
2025年7月3日
何といっても、現代技術を特徴付けるのは豊富な工業製品の氾濫であろう。自然資源を有用な人工物に変換することによって豊かさを達成するという、あたかも自明と考えてきた命題は、多くの矛盾をはらむようになってきたと言わざるを得ない。結局は充填率の限界などの現代技術が持つ問題に本質的に影響を与えていく重要な視点である。私は、物の所有にとらわれず、機能を上手に活用する考え方で生きていきたい。
そのための方法としては第一に、ものを持つことだけに価値を置かないことだ。私は2歳からバレエを続けていて、これまでに何度もコンクールや発表会の舞台に立ってきた。コンクールでは、自分専用の衣装を持って何度も同じ演目で出場する人もいるが、私は毎回異なる踊りに挑戦するため、衣装はすべてレンタルを利用している。発表会においても、ほとんどの衣装は教室が所有しているものか、全体で共通のレンタル衣装を使ってきた。それでも不便に感じたことはほとんどない。自分の衣装でなくても、舞台での表現や踊りの質に違いは出ないと感じているからだ。一方で、母が私の誕生日にオーダーメイドのティアラをプレゼントしてくれたことがある。これは私のためだけに作られたもので、特別な思い出が詰まっている。今でも大切にしているし、持ち物としての価値も感じている。ただ、そうした特別な意味を持つもの以外は、無理に自分で所有する必要はないと思う。舞台に立つという目的に合ったものを、その時その場でうまく活用できれば十分だ。所有しているかどうかよりも、それをどう使いこなすかの方が大切なのではないだろうか。そして何より、舞台で踊るという「体験」そのものに価値があるのだと、私は感じている。
また第二の方法としては、レンタルのしやすい社会の仕組みを整備していくことだ。1700年代のアメリカで、ベンジャミン・フランクリンという政治家や科学者など、多方面で活躍した人物がいた。そのひとは、みんなが本を自由に読めるようにと、アメリカ初の公共図書館の仕組みをつくったそうだ。それまでは、読みたい本があっても高価で買えなかった人が多く、本を持っているかどうかで学ぶ機会に格差が生まれた。しかし、図書館ができたことで、本を借りて読むという新しい選択肢が生まれ、より多くの人が知識にアクセスできるようになったという。このように、必要なものを必要なときに借りられる仕組みがあることで、社会全体の可能性が広がるのだと思う。今の時代でも、図書館はもちろん、自転車や家電、服など、さまざまなものがシェアリングできるようになってきている。こうした仕組みがもっと当たり前になれば、持ち物の多さで豊かさをはかるのではなく、使い方や体験に重きを置く暮らしがしやすくなるのではないだろうか。
確かに、自分を取り巻く人々との関係、信頼といったものまでレンタルすることはできない。しかし、アリストテレスの『幸福とは、所有ではなく活動の中にある』という名言もあるように、私は物の所有にのみにこだわらず、自分に必要なものを機能としてレンタルして必要十分という生き方をしていきたい。大量消費の時代が終わりつつある今、自分にとっての本当の豊かさとは何かを見つめ直し、ものの「持ち方」ではなく「活かし方」を大切にすることが、これからの暮らし方につながっていくと私は思う。