手段とその意欲
    ()  年月日

 ある日、いつものように散歩をしていると、普段とは少し景色が変わっていたため、道に迷ってしまった。動物は、習慣によって獲得した情報を、無意識のうちに蓄積しているため、その情報に忠実であれば、道には迷いにくい。しかし、地図という道具を上手く使えていないと、かえって道に迷いやすくなる。私にも、常に同じような動きをしていると、それが習慣となって自然と行えるようになったという経験がある。そして、人間が作り出す情報によってさらに効率的になると思いきや、そうでない場合もあるというのが現状なのだ。

 

 確かに、他人から得た情報を活用することは大切だ。私は以前の国語の授業で、それまで学習した文章をもとに、自分なりの意見を作品としてまとめるという課題に取り組んだ。しかし、周囲のクラスメイトは皆、すらすらと書き始めていたのに、自分だけは書き出し方も分からないまま手が止まってしまっていた。その時私は、近くにいた友達の文章を見せてもらうことにした。そうすることで、自分はどのように書いていけば良いのかが明確になった。このように、他者からの情報はとても役に立つものだ。もちろん、その情報だけに頼り、自分自身で考えることを忘れているようでは、何も成長しないままになってしまう。だが、あくまでも「助けてもらう」という距離感でいることで、上手く活用することができるのだ。



 しかし、物事を自分の中で解決することも大切だ。例えば、2011年に起きた東日本大震災では、他者からの情報に頼らず、自らで判断し行動したことが、良い結果をもたらした。このの震災では、地面の揺れの他に、津波の被害に遭った人々も多くいた。そういった地域に住んでいた人々は、津波の危険性を過去の話から事前に学んでいたそうだ。当時、生死を分けることになったのは、その学びから得た「とにかく高い所へ逃げる」という判断の早さだった。通常ではない状況に戸惑っている中でも、他人からの指示を待たず、即座に判断して高台へ逃げた人々が、生き残ることができたのだ。このように、自分の経験や直感に基づくことが良い結果を生むこともあるのだ。



 他人からの情報を得ることも、自分自身で完結してしまうことも、どちらにも良い面がある。しかし、最も大切なのは、解決しようとする意欲を持つことである。「理想に到達するための手段はまた、理想への到達を阻む障害でもある」という言葉があるように、様々な道具が存在している現在、その道具をどのように使っていくのかはとても大切である。だが、それよりももっと、意欲を持つことの方が大切であり、それが全ての原動力となる。私たちは、どのような手段を使うかよりもまず、自分の心と向き合うべきなのだ。