正直な心
    ()  年月日

改造さんは

「わしはじぶんの井戸のことばかり考えて、あなたの死ぬことを待ちねがうというような、鬼にもひとしい心になりました。」

といいました。老人は口を切って

「お前さんは、心のええおひとじゃ、わしは長い生涯じぶんの欲ばかりで、人のことなどちっとも思わずに生きてきたが、今はじめてお前さんのりっぱな心にうごかされた。それじゃ、あそこへ井戸を掘らしてあげよう。」

といいました。

この話を読んで一番驚いたところは、海蔵さんが頭に浮かんでしまった悪い考えを隠さず、地主に正直に打ち明けた場面です。地主はもう弱っていていつ亡くなってもおかしくない状況だったので、地主の息子から父が死ねば井戸のことは許すと聞かされたとき、海蔵さんは悪い心になってしまいました。しかしそれをそのまま隠すのではなく、勇気をもって本人に謝罪したのは本当にすばらしいと思いました。



私自身も似たような経験をしたことがあります。友達がとても大事にしているシールだとは知らずに、つい自分のもののように勝手に使ってしまったことがありました。シール帳を作る遊びを友達と一緒にしていたときに、たくさんのシールを机の上や箱の中に広げて置いていたので、どれが誰のものなのか全く区別がつかなくなったままどんどん使ってしまったのです。そんなときに友達が帰ってきて、わたしの大事なシールを知らない?と聞かれたとき、私は胸がドキリとしてすごく焦ってしまいました。最初はうそをついてごまかしてしまおうかという気持ちも一瞬頭をよぎりました。でもそのとき、心の中で罪悪感が大きくなりその気持ちに負けてしまって、正直に自分が使ってしまったことを謝りました。やはり人に正直に謝ることは勇気がいるけれど、それによって自分が楽にリラックスできるようになるのだと感じました。このお話は、まるでイソップ寓話の木こりが金でも銀でもなく鉄のおのが自分のものだと正直に答えたお話のように、うそをつかずに正直に話すことが大切だということを教えてくれているのだと感じました。



もし私が海蔵さんの立場だったら、自分の心の中に生まれてしまった悪い考えを、正直に相手に打ち明けることはできなかったと思います。自分の心の弱さについて人に話すのはとても勇気がいることなので、こんなことを言ったら相手に嫌われるのではないか、自分が悪い人だと思われるのではないかと考えてしまい、つい隠してしまうと思います。私は普段から失敗したことや後ろめたいことがあると、正直に言うよりも黙ってごまかしたくなってしまいます。だからこそ、海蔵さんが地主に対して自分の心の中の悪い考えを素直に伝えて、しかも心から謝ることができたのはなかなかできることではないと思いました。私はこの場面から、正直であることや、間違いを認めて謝る勇気の大切さを学びました。



このお話を読んで、日常生活の中で正直な気持ちになって過ごすことがとても大事なのだと私は実感しました。自分のまちがいや悪い気持ちをそのままにしてしまうのは簡単だけれど、本当に大切なのは勇気を出して相手に正直に伝えることだと心の中で思いました。