秋にぴったりなBGM
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    秋にぴったりなBGM

              はるまき

 夏の終わりには、夕焼けと共に美しい音色が聞こえる。

「カナカナカナカナカナ⋯」

ひぐらしが翅を動かしているのだ。澄んだ音色を密かに楽しみにしている人は、私だけではないと思う。

「私、ひぐらしの音好きだな〜」

やはり、母も楽しみにしているそうだ。ひぐらしの音色が聞こえ、それに加えて夕焼けが見えると、何だか切ない気持ちになる。でも、これがないと秋という感じがしない。ひぐらしの音色は、秋という季節に定着しているのである。

 秋の夜のこと。

「鈴虫の音が聞こえるよ!」

ベランダで洗濯物を干している母の声が聞こえた。

「えっ、聞こう聞こう!」

夜ご飯を食べていた父も飛び出して、家族三人で鈴虫の音色を聞いた。星のようなきらきらとした音色が、美しいというかきらびやかというか

、夜空にぴったりな雰囲気を醸し出している。鈴虫も秋にすっかり定着していた。

 父は、小学校から帰ってきたら、真っ先に田んぼで虫取りをしていて「ザ・虫大好き少年」という感じの少年だったそうだ。そんな父のことだから、きっと秋の虫を飼っていたのだろう。そう予想しながら、早速聞いてみる。

「鈴虫を、水槽みたいなのに入れて飼ってたよ。すごく綺麗な音色で、毎日聞き惚れてたねぇ⋯」

と、父はしみじみと語ってくれた。私も母も、いつも

「鈴虫とかコオロギとか飼いたいねぇ。」

と話している。うるさいともよく聞くが、機会があれば一度は飼ってみたい。

「会社から帰ってくるときも、もう大合唱だよ。」

こんな都会でも、秋の虫の大合唱が聞けるらしい。私はまだ子供だから夜は外に出られないが、もう少し大きくなったら、美しい大合唱を楽しみに夜の道を歩けるのだなぁ⋯とうらやましくなった。

 鈴虫やひぐらし、コオロギなどの秋の虫。切ない夕方やきらびやかな夜に、秋の虫たちの翅の音色はぴったりだ。

「カナカナカナ⋯」

「リーンリーンリーン⋯」

今日も、ひぐらしや鈴虫の音色が聞こえる。そんな虫たちの音色は、秋に欠かせないBGMなんだなぁと心の中で思った。