忍耐力
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  自分で判断し決断し行動する。簡単なように見えてとてもむずかしい。大勢の意見に依存してしまうほうが楽である。主体的に判断して、行動したいという欲求を除けば、他人や集団に依存して行動してしまいがちになる。しかし、社会生活を送っていく以上、自分で考え、判断しなければならない。それなくして、一般的な社会生活を送ることすら困難である。だが、よほど意識的に教育しなければ、他人依存になってしまう。しかし、最近の教育状況はこれに逆境していることが少なくない。そのせいか、他人依存であり、集団依存であり、状況に支配されやすいといった傾向がある。今の学生は、自分で考え、判断し、決断するといった作業に慣れていないといってよい。



 自分で判断し、考えること、つまり主体的に行動することは大切だ。主体的に行動できなければ、「良い部下」となるだけで「良い上司」とはなれないだろう。イソップ童話に「ろばを売りに行く親子」という話がある。父親と息子がロバを市場へ売りに行く途中、周囲の人々の意見に振り回され、息子だけが乗る、父親だけが乗る、二人で乗ると次々に乗り方を変える。最後にはロバを棒で担いで運ぼうとするが、ロバが暴れて橋の上から川に落ちてしまう。周囲の声に従いすぎた結果、ロバを失ってしまう、という話だ。周囲の人の意見に流されない、自主性や自律の大切さを教訓として見ることができる。周りの意見に従うより、自分自身の意見で貫いたほうが得をすることもある。



 しかし、他人や周囲の意見を取り入れることは大切である。2011年の群衆判断の精度についてのスイスの複数の大学による研究がる。この研究では、数値推定タスク、つまりアメリカの犯罪率などについての問が、実験室に集められた144人に出された。他人の答えを知らずに自分だけで推定したときは、個人の誤差は大きいが全員の平均値をとると正解に近づいた。しかし、他人の推定値を見てから答えると、答えの誤差が収束したという結果だ。また、私の学校では意見を述べ合う機会が多々あるのだが、そこで自分の信じることを貫くと、議論が進まない。ある程度の譲歩が必要で、他人の意見に耳を傾けることが必要となり、一つの技術となる。



 自分で考え、判断することも、他人の意見を取り入れて判断することも、どちらも大事であり、それぞれ使い分けることが大切である。それらを使い分けることにより、自らが成長するときもあるはずだ。しかし、どちらも結局は方法論である。トーマス・エジソンは「多くの人は、諦めたその時に、自分がどれほど成功へと近づいていたかに気づかない」という言葉を残している。大切なのは、自分が諦めない心を持つこと、やると決めたことをやり遂げる、そのような意思を持つことだ。結果を出すために方法がある。結果を出すという目標に向かって、粘り強く、諦めずに進むこと、それを可能にするような忍耐力を持つことが、最も大事なことであると信じている。