深い思索(しさく)から出発し、理論的に自分の意見を組み立てていて、とても読みごたえのある文章でした。

<<え2021/52み>>

【総評】
 この意見文は「幸福は現実には存在しない」という独自の視点から出発し、人間にとって「欲望」こそが前進の源であるという主張を一貫(いっかん)して展開しています。哲学(てつがく)的な問いを(じく)に、論理的な構成と具体的な事例によって読み手を納得させる力がありました。自作名言のような表現も見られ、文章全体に知的な緊張(きんちょう)感が漂っ(ただよっ)ています。また、段落構成も整っており、主張→方法①→方法②→反論への理解→主張の再確認という意見文の型をしっかり守れていました。

【段落ごとの講評】
第1段落:冒頭(ぼうとう)から「幸福は存在しない概念(がいねん)である」という逆説的な主張を展開し、読者の関心を引きつけています。「夢」と「欲望」を比較(ひかく)しながら、「人間の欲が尽き(つき)ないこと」に論理的に結びつけた展開は非常に説得力があります。

第2段落:「好きなこと=欲の源泉」とする着眼点が明確で、写真やテスト勉強の例を通じて、欲によって行動が促さ(うながさ)れる様子がよく伝わってきます。中学時代の自分の経験を適度に振り返る(ふりかえる)ことで、主張に具体性が加わっています。

第3段落:ビスマルクの例を使って、成功体験の積み重ねが欲望を持ち続ける(かぎ)であるという主張に深みが出ています。歴史的な実例を的確に引用できており、論の信頼(しんらい)性を高めています。「十段飛び越えよ(とびこえよ)うとせず、一段ずつ登る」という表現も印象的で、名言的な力があります。

第4段落:他者を犠牲(ぎせい)にするような欲望は抑える(おさえる)べきだという反対意見にしっかり触れ(ふれ)、それを認めたうえで改めて自分の主張を補強している点が秀逸(しゅういつ)です。「必要は発明の母」のことわざを自然に取り入れ、自分の主張と重ね合わせるまとめ方も見事でした。

【特に優れていた点】
・「幸福と欲望」という抽象(ちゅうしょう)的なテーマを論理的に展開できている
・中学時代の体験や歴史的実例を用いて主張を裏づけている
・「階段を一段一段登る」というたとえが自作名言として非常に効果的
・反対意見を取り上げたうえでの自説の再確認が丁寧(ていねい)

【考えを深めるための質問】
 あなたにとって、欲望を「持ちすぎてしまった」と感じた経験はありますか? そのとき、どう向き合いましたか?

内容◎ 構成◎ 題材◎ 表現◎ 主題◎ 表記◎

字数/基準字数:1109字/1000字
思考点:77点
知識点:86点
表現点:81点
経験点:82点
総合点:88点
均衡(きんこう)点:7点

 


■思考語彙 20種 27個 (種類率74%) 77点
 確か, 第,。しかし,。つまり,あろう,からこそ,が可能,たから,だろう,と思う,ないから,なれば,れれば,取るため,叶えば,欲望によって,目指そう,続けるべき,飛び越えよう,.例えば,

■知識語彙 70種 91個 (種類率77%) 86点
一段,不可欠,中学,中学校,事情,人間,代償,以上,体験,便利,充実,公立,具体,写真,勉強,向上心,夢中,大切,存在,完全,定期,実現,宰相,容易,帝国,幸福,得点,必要,快適,成功,成績,技量,提示,支障,方法,最悪,最終,条件,根本,概念,構図,機材,欲望,満月,満足,潜在,無力,無理,無限,物事,状態,現実,生活,発明,目標,直前,相手,真面目,着実,社会,統一,絶対,興味,諦観,距離,進級,階段,顕在,高性能,高校,

■表現語彙 118種 203個 (種類率58%) 81点
 確か,が可能,こと,ごと,さ,そちら,それ,それら,たち,もの,やる気,よう,オーストリア,テスト,デンマーク,ドイツ,ビスマルク,フランス,一,一つ,一段,不可欠,中学,中学校,事情,二,人,人間,他,代償,以上,体験,何,便利,充実,公立,具体,写真,初め,勉強,化,十,取るため,向上心,回,国,夢,夢中,大切,好き,存在,完全,定期,実現,宰相,容易,帝国,幸福,得点,心,必要,快適,思いやり,感,感じ,成功,成績,技量,提示,支障,方,方法,暮らし,最悪,最終,条件,根本,概念,構図,機材,欲,欲望,段,母,満月,満足,潜在,無力,無理,無限,物事,状態,現実,生き方,生活,発明,的,目標,直前,相手,真面目,着実,社会,私,統一,絶対,興味,諦観,距離,近く,進級,道のり,階段,際,順,顕在,高性能,高校,

■経験語彙 42種 54個 (種類率78%) 82点
しまう,せる,できる,と思う,なれる,れる,似る,例える,保つ,出る,取り組める,取る,叶う,変える,定まる,尽きる,得る,思い込む,感じる,戦う,抑える,持つ,撮る,望む,求める,満たす,満ちる,現れる,生じる,生まれる,登る,目指す,積み重ねる,立てる,続ける,見つける,見失う,譲り合う,近づく,追う,違う,飛び越える,

■総合点 88点

■均衡点 7点
 

人間の欲
   高1 あうては(auteha)  2025年10月1日

 私は幸福とは現実には存在しない概念だと思う。それは夢と同じようなもので、夢は叶っていないからこそ夢として存在している。叶えば夢でなくなる。幸福も似たようなものだ。幸福とは満月のように心が満ちたり、もはや他に何も望むものがない状態だろう。しかし、人間の欲はほとんど無限である。欲望が尽きることはない。例え満足していると思い込んでいたとしてもそれは欲が潜在しているだけで、より良い条件を提示されればそちらを望むようになる。尽きない欲に無力さを感じはしても、完全に満たされることはないのだ。そして、私たちは欲望によって向上心が生まれている。より良い状態を目指そうとするのも根本には欲がある。よって私たちは顕在的な欲を持ち続けるべきだと思う.

 

 第一の方法は、好きなこと、夢中になれることを見つけることだと思う.例えば、写真を撮ることが好きになれば、より高性能な機材、より美しい構図、より良い技量を求めるようになる。このように興味のあるものについては、具体的な目標が定まりやすくなる。私も、高校では少し事情が違うが、中学では定期テスト勉強は欲があったからこそ取り組めていた。公立中学校ではどんなに悪い成績を取ったとしても進級が可能だ。よって最悪全くテスト勉強をしなかったとしてもそれほどの支障はない。けれども私は少しでも高い得点を取るために比較的真面目にテストの直前には勉強をしていた。つまり、欲があったからこそ勉強ができたのだ。

 

 第二の方法は、成功体験を積み重ねることだ。絶対に無理な欲を持ったとしても、実現するまでの道のりの遠さに無力感を感じ、こういうことが何回かあると諦観を生じ、欲が潜在化して容易には現れなくなってしまう。それより、小さい目標も立てて、それらを一つ一つ実現していくことで大きな目標に近づいていく方が最終的な距離は近くなっていく。ドイツ帝国の宰相のビスマルクはドイツ統一の際、デンマーク、オーストリア、フランスと初めは小さな国、順を追うごとに大きな国へと戦う相手を変えることで、最終的にドイツを統一した。このように目標は階段を一気に十段飛び越えようとするのでなく、一段一段着実に登る方が欲は叶いやすいし、見失うこともない。

 

 確かに、実際的な、他の人を代償にして得るような欲は抑えるのも大切だ。人間が社会的な生き方をしている以上、譲り合い、思いやりは不可欠である。しかし、人間は欲があった方が物事のやる気も出るし、向上心も保つことができる。必要は発明の母というが、それもより便利、快適な暮らしを望む欲であろう。私も常に向上心を保って生活を充実させたい。