カキの恵み
   小6 みさ(misa)  2025年10月2日

 カキこそは千年にも渡って日本人と共にあり、幾多の詩歌に詠まれてきた郷愁の果物ともいえる。タンニンは、カキが未熟なころは水(果汁)に溶ける性質があって渋く、成熟にしたがって自然に水に溶けない性質に変わって黒い「ゴマ」になり、渋みがなくなる。果実が赤く完熟してタネが充実し、渋みのなくなる「熟しガキ」の時期こそが、動物たちの食べたい気持ちと、タネを運んで欲しいカキの思いと一致する時なのだ。

 私もカキは大好きである。実際に、この文を読んでカキが食べたくなり、母に頼んで買ってもらうほどだ。カキではないが、幼稚園の頃にさくらんぼの木が植えてあり、みんなで登って食べていたことがある。幼稚園の先生が、「みんな食べるのはそのくらいにして、鳥さんのために残しておきましょう」と声をかけているのを覚えている。そのときはなぜ鳥にさくらんぼを渡さなくてはいけないのか分からなかったが、今では自然の中で生きる動物たちと食べ物を分け合うことの大切さが少し分かるような気がする。自分たちだけが食べてしまうのではなく、他の生き物のことも考える気持ちは、今でも大事にしたいと思う。

 柿の原産地は中国や日本など諸説あるが、現在日本で栽培されている柿のもとになったものは、中国から伝わったと言われている。奈良時代には栽培されていたが、当時の柿は今のように甘い柿はなく、すべて渋柿であったため、干柿や熟柿(じゅくし)として主に祭祀用に使われていたらしい。その後、鎌倉時代に甘柿が誕生し、江戸時代になると200種ほどの品種が栽培されるようになった。多くの植物は、海外から日本に伝わることが多いのだが、柿は日本から海外へ広まった植物で、海外でも「KAKI」と呼ばれている。それは、原産地であろう中国では、日本ほど品種改良や栽培が発達しなかったからのようだ。そういう点からみても、日本の品種改良は優れているといえるだろう。

 昔はカキ泥棒などよくしていたらしいが今はあまり聞かない。最近はりんごやみかんの方が人気に思えるが、理由ははっきりしない。甘さや見た目の華やかさ、あるいは手軽さが関係しているのかもしれない。カキは熟すのを待つ時間が必要だし、渋が残ることもある。対してりんごやみかんは、買ってすぐに食べられる。しかも、近年は品種改良が進み、香りも甘さも格段に良くなっている。一方で、昔ながらのカキの木は今も農村のあちこちに残っていて、晩秋になると鮮やかな朱色の実をつける。誰も取らず、葉を落とした枝に鈴なりに実る姿は、どこか寂しさを感じさせる。それでも鳥たちにとっては貴重なごちそうで、ヒヨドリやムクドリが群れをなしてやってくる。人間の好みが変わっても、季節は同じように巡っていく。そう思うと、カキは人間にとって貴重な恵みなのかもしれない。