字数・構成・表現ともに高校一年生の指導項目(こうもく)を高い水準で満たした優れた意見文です。今後も、自分の経験と他者の視点を結びつけながら、さらに深い思索(しさく)を進めていってください。

<<え2015/972pみ>>

【総評】
 「効力感」というテーマを通して、子どもの成長と大人のかかわり方を深く考察しており、非常に完成度の高い意見文です。体験談と歴史的な事例を組み合わせながら、読者を納得させる説得力のある構成ができています。論の展開にバランスがあり、主張とその裏づけの両方が丁寧(ていねい)に書かれていました。

【段落ごとの講評】
第1段落:冒頭(ぼうとう)で「効力感」についての定義を提示し、問題提起として「子どもの成長にブレーキをかける親の行動」を挙げることで、読者の関心を引きつける導入ができています。主題「子どもの効力感を大人がどう支えるべきか」も明確です。

第2段落:自分の体験を交えて「興味の芽を育てる環境(かんきょう)づくり」を提案し、心理的・人間的側面からの方法がしっかりと示されています。「歴史の雑誌がきっかけ」という具体例が説得力を高めています。

第3段落:社会・教育的側面からの方法として「段階的な学び」の必要性を挙げ、ビスマルクの戦略を比喩(ひゆ)として用いることで独自の視点が光っています。物理の授業のエピソードがユーモアも交えながら展開されており、読み手の共感を呼びます。

第4段落:反対意見への理解を示しつつ、最後に「型にはめるのではなく、可能性を伸ばす(のばす)べき」という主張に回帰することで、文章全体に一貫(いっかん)性と締まり(しまり)与え(あたえ)ています。最後の一文は、自作名言としての逆説性と余韻(よいん)が感じられます。

【特に優れていた点】
・「効力感」という抽象(ちゅうしょう)的な概念(がいねん)を的確に扱い(あつかい)、具体例と結びつけて論を展開している
・歴史的事例(ビスマルク)や個人的体験(物理の授業、雑誌の出会い)を的確に用いて説得力を高めている
・反対意見を一部認めた上で再び主張に戻る(もどる)構成が論理的で、読後感に深みがある
・「同じ型に嵌めてしまえば、結局できる形は同じ」という表現は、自作名言として優れており、主題を象徴(しょうちょう)的に表しています

【考えを深めるための質問】
 あなたが感じた「効力感」が最も強かった経験は、どのようなものでしたか? そのとき、周囲の大人はどのように関わっていましたか?

内容◎ 構成◎ 題材◎ 表現◎ 主題◎ 表記◎

字数/基準字数:1199字/1000字
思考点:72点
知識点:90点
表現点:92点
経験点:97点
総合点:88点
均衡(きんこう)点:1点

 


■思考語彙 18種 24個 (種類率75%) 72点
 確か, 第,。しかし,。例えば,がむしろ,くる場合,しまえば,すべき,すると,だろう,と思える,ないので,なければ,ならざる,なると,の可能,押し通そう,避けるべき,

■知識語彙 75種 105個 (種類率71%) 90点
世界,中間,他人,位置,体系,価値,先生,内容,写真,分野,効力,勝利,向上,問題,図鑑,国力,土台,基礎,大人,大切,大国,子供,学期,学校,定期,実感,工夫,形成,循環,必要,成長,挑戦,挫折,授業,教育,文字,方法,書店,期待,本棚,機会,歴史,段階,活動,無理,物事,物理,特性,獲得,理解,生活,発達,目線,直前,知識,社会,粘土,結局,結果,統一,自分,自己,自然,自発,自覚,興味,解説,賞罰,近道,達成,限界,隣国,雑誌,順調,食卓,

■表現語彙 142種 219個 (種類率65%) 92点
 確か,おかげ,がち,きっかけ,くる場合,こと,これ,さまざま,ざら,しのぎ,それ,たち,ちんぷんかん,ところ,の可能,もの,やる気,よう,オーストリア,システム,テスト,デンマーク,ドイツ,ドミノ,ビスマルク,フランス,ブレーキ,ページ,一,上,世界,中,中間,二,今,他,他人,位置,体系,何,価値,先生,全て,内容,写真,分野,効力,勝利,化,向上,問題,図鑑,国力,土台,型,基礎,場,多く,大人,大切,大国,好き,子ども,子供,学期,学校,定期,実感,工夫,形,形成,役,循環,必要,性,感,成長,手,挑戦,挫折,授業,教育,文字,方,方法,書,書店,期待,本,本棚,様々,機会,歴史,段階,気,活動,点,無理,物事,物理,特性,獲得,理解,生活,発達,的,目線,直前,知識,社会,私,粘土,紙,結局,結果,統一,自分,自己,自然,自発,自覚,興味,親,観,解き方,解説,賞罰,赤,身の丈,躾,近道,達成,遠回り,間,限界,隅々,際,隣国,雑誌,順調,頭,食卓,

■経験語彙 52種 79個 (種類率66%) 97点
おく,かける,しまう,す,すっ飛ぶ,せる,つける,できる,とる,と思える,なくす,やる,られる,れる,仕向ける,伸ばす,倒す,入る,出る,分かる,取る,合う,味わう,増やす,始める,学ぶ,嵌める,広がる,広げる,得る,慣れる,戦う,押し通す,持てる,望む,潰す,生まれる,知る,置く,見つける,見分ける,解く,触れる,読む,買う,起きる,踏む,転がる,選ぶ,避ける,開く,頼る,

■総合点 88点

■均衡点 1点
 

効力感
   高1 あうては(auteha)  2025年10月3日

 効力感とは自分のしたいことだと思える活動や達成を選び、そこで自己向上感が実感されてはじめて獲得されるものだ。自然な生活の中で、子どもは極めて多くの望ましい特性を発達させていく。気をつけなければならないのは、親がむしろこれにブレーキをかける役をしてしまいがちなことだ。全ての躾や教育を賞罰に頼って押し通そうとすると、効力感を伸ばすことはまず無理になる。できるだけ子どもなりの知識の体系や価値観が形成され、さらにそれが自覚化されていくのを期待するようにすべきだろう。私たちは子供の効力感を潰すことは避けるべきだ。

 第一の方法は様々な物事に触れる機会を増やすことだ。興味の持てる分野を見つけることで自発的に学び、成長していくことで結果として効力感を得ることができる。要するに他人が何かをやらせるのではなく、自分からやりたいと思えることを見つけるのだ。例えばさまざまな分野の図鑑や本を、本棚の目線の位置に置いたりして自然に手に取るように工夫し、紙と文字と写真を通じて子供たちが自分の世界を広げていくように仕向ける。そして広がった世界で好きな分野を見つけられるのだ。私も、歴史の雑誌がたまたま食卓に置いてあって、ページを少し開いてみたところから、歴史が好きになり、社会を好きになった。きっかけは隅々に転がっているのだろう。

 第二の方法は段階を踏んで学ぶことだ。いきなり自分の身の丈に合わないことに挑戦しても挫折感を味わい、やる気をなくしてしまう。ドイツ統一の際にビスマルクは、デンマーク、オーストリア、フランス、と国力の弱い隣国から順に戦い、勝利していった。いきなり大国のフランスと戦っても順調にはいかなかっただろう。遠回りをした方が結局近道なことはざらにある。私も学校の物理の授業で先生が基礎知識をすっ飛ばしていきなり問題の解き方の解説から始めるおかげで、一学期の間はちんぷんかんだった。土台ができていないのでいくら問題を解いたところでその場しのぎにしかならず、定期テストではしっかりと赤点をとった。そこで、二学期の中間テストの直前に書店で解説書を買って読んでみたら内容が頭にスッと入り、ドミノ倒しのように今まで何を言っているのか分からなかったところも次々に理解することができた。また、段階を踏むことで達成感を得られ、やる気が起き、そして達成感を得るという好循環が生まれる。

 確かに、自分の限界を知っていることも社会に出る上では必要だ。自分にできること、できないことを見分けられなければならない。他にも、大人になると自分では望まないことでもやる必要が出てくる場合がある。よってそういった社会システムに慣れておくことも大切だ。しかし、さまざまな形の粘土も同じ型に嵌めてしまえば、結局できる形は同じである。子供たちの可能性を、親は潰すのではなく伸ばすように工夫するのが大切なのだろう。