許すのも優しい正義(清書)
   小4 はるまき(akoruka)  2025年11月4日

    許すのも優しい正義(清書)

              はるまき

 「あっ、もう五十五分だ!用意しないとっ!」

私は、毎週日曜日の午前八時から八時四十五分まで、言葉の森に通っている。言葉の森は、ご存知の通り作文を書く教室なのだが、私はパソコンで作文を書いている。もちろん、紙で書くことも大切なのだが、パソコンを使うとすぐに消したり直せたりして便利だと思うからだ。そして、完成した作文は、母にホームページへと送ってもらう。そんなときに、トラブルが起こった。

 「どうしよう⋯」

作文を書き終わってのんきに寝転がった矢先に、母の緊迫した声が響いた。ドキドキしながらパソコンをのぞいてみる。

「えっ⋯」

私は、ぽかんと口を開けた。整った文字が詰め込まれているはずの画面が、真っ白になっているのである。母は、弱々しく理由を説明した。ホームページに作文を送るとき、保存ができていなくて、作文を全て消してしまったらしい。この話を聞いたとたんに、私の心が噴火したように頭がカーッと熱くなり、

「もうっ、何やってんのっ⋯!!」

と震えた声で叫んだ。頑張って書いたのに。消しちゃったら、二度と同じ作文は書けないのに。

「ごめんなさい⋯お菓子とか買ってあげるから、許して⋯」

母は、目尻を下げて手のひらを合わせた。私が母だったら、きっと悪気はないだろう。しょうがないことだし、許すという選択もありなのかもしれない。

「グミ買ってくれたら許す⋯」

私は、うつむいて母を許した。なんだかすっきりした気分になって、さっきよりも良い作文が書ける気がした。

 この経験を通して、「許す」ということを考え始めた私は、父にも意見を聞いてみることにした。

「俺はイベント会社で働いてるけど、どんなイベントを手掛けるか決めないといけない。そのために、たくさんの会社が集まって、『こちらは、そのイベントをこんな風に盛り上げます!』って資料を送って、イベントの取り合いみたいなことをするんだ。」

父は、身振りを加えながら話し始めた。

「それで、担当の社員、俺にとっては部下が、体調不良になって遅れちゃったんだよ。で、失格になっちゃった。」

私は、苦笑する父を見ながら、残念だなぁ⋯と思っていた。でも、体調不良なんて誰にでもあることだし、しょうがないのかもしれない。

「その通りだよね。だから、俺は許した。次の機会に活躍してくれることを期待してね。僕、『許す』って、人生において大切なテーマの一つだと思うんだ。」

なぜ大切なテーマなのか、具体的な理由はわからないけど、なぜか納得できる気がした。

 もちろん、怒ることも正義だ。怒らないと、また同じことが繰り返されてしまうかもしれない。でも、何か嫌なことをされても、その人は悪気がない場合がたくさんある。だから、「許す」というのも、優しい正義の一つなのかなぁと心の中で思う。私は、ゆっくりとパソコンのキーボードを打ち始めた。