抽象(ちゅうしょう)的な概念(がいねん)を的確にとらえ、現代社会の問題と重ね合わせて深く論じた見事な意見文でした。

<<え2015/323pみ>>

【総評】
 「攻撃(こうげき)性の知性」と「受容性の知性」という独自の視点から、人間社会と自然との関係を見つめ直し、そこから人間の生き方や社会のあり方にまで論を広げている力作です。象や(くじら)に学ぶべき点として、「能力の過信を戒める(いましめる)こと」「暴力に頼ら(たよら)ないこと」という二つの方法を挙げ、それぞれ具体的な例や比喩(ひゆ)を交えながら説得力のある論証を展開しています。織田信長と秀吉(ひでよし)比較(ひかく)や、紙を42回折るというたとえもユニークで、知的な構成力が光っています。

【段落ごとの講評】
第1段落:冒頭(ぼうとう)から「知性」を「攻撃(こうげき)性」と「受容性」に分類した独自の視点が提示されており、読者の関心を引きつけます。自然と共存する「受容的な知性」の価値に目を向けたことが、全体のテーマを明確にしています。

第2段落:「能力の過信を戒める(いましめる)」という主張に対し、人間の社会的協調の必要性を例示しながら論じています。「貪欲(どんよく)は必ず身を食う」などことわざも効果的に使われており、文章に深みがあります。

第3段落:「暴力に頼ら(たよら)ない」ことを、歴史的事例や環境(かんきょう)問題と関連づけて論じている点が秀逸(しゅういつ)です。織田信長と秀吉(ひでよし)の対比は読み手に強い印象を与え(あたえ)、主張を具体化しています。歴史的背景に支えられた論述は、説得力をいっそう高めています。

第4段落:現実には争いが避け(さけ)られない場面があることを認めつつも、共存の努力が重要だという立場を明確にしています。「紙を42回折れば月まで届く」という比喩(ひゆ)は発想がユニークで、「努力と協力の積み重ねが可能性を広げる」というメッセージがよく伝わります。

【特に優れていた点】
・「攻撃(こうげき)性」と「受容性」の知性という独自の視点を一貫(いっかん)して展開している
・協調と謙虚(けんきょ)さの必要性を現実と照らして具体的に論じている
・歴史的事例や科学的たとえを効果的に用いて論の説得力を高めている
・反対意見への理解と総合的な視点を持って論をまとめている

【考えを深めるための質問】
 あなた自身が、これまでに「受容性の知性」を発揮できたと感じる場面はありますか?もしあれば、それはどんな体験でしたか?

字数/基準字数:1314字/1000字
思考点:97点
知識点:103点
表現点:99点
経験点:89点
総合点:102点
均衡(きんこう)点:5点

 


■思考語彙 28種 36個 (種類率78%) 97点
 確か, 第,、いわば,。しかし,。つまり,。一方,いくべき,いこう,いるから,いると,いれば,これに対して,しよう,すれば,そのため,た場合,だろう,は言える,ももちろん,光秀によって,失わざる,学ぶべき,惜しむべき,折れば,生きるため,自然に対して,行動によって,見れば,

■知識語彙 94種 133個 (種類率71%) 103点
主義,人間,人類,他人,便利,信長,個人,光秀,全体,共存,分担,分野,努力,勢力,協力,協調,単位,危機,即効,受容,各国,困難,地球,変化,多様,大切,大量,天下,安全,将軍,屈服,性格,意見,懐柔,技術,持続,排他,排除,支配,攻撃,敵対,方法,明智,普段,暗殺,暴力,根本,模索,殺戮,無限,現実,現実味,理由,理解,理論,環境,生命,生活,生物,発揮,矛盾,知性,破壊,社会,秀吉,科学,積極,組織,結局,繊細,織田,義昭,能力,自分,自然,自身,行動,行為,複雑,言葉,謙虚,譲歩,豊臣,貪欲,資本,起因,足利,軍事,連鎖,進歩,過信,適応,陰謀,高度,

■表現語彙 156種 240個 (種類率65%) 99点
 確か,いずれ,いつか,こと,これ,そのため,それ,それぞれ,たち,た場合,ほか,まま,もの,よう,コントロール,サバイバル,スパン,ツケ,一,上,中,主義,争い,二,人,人間,人類,今,他,他人,代わり,体,便利,信長,個々人,個人,像,光秀,全体,共存,分担,分野,力,努力,勢力,協力,協調,単位,危機,即効,受容,各国,周り,営み,回,困難,地球,壁,変化,多様,大切,大量,天下,安全,将軍,屈服,山,幅,彼ら,心,性,性格,恐れ,恨み,意見,憎しみ,懐柔,手,技術,持続,排他,排除,支配,攻撃,敵対,方法,明智,星,時,普段,暗殺,暴力,月,根本,様々,模索,殺戮,母,無限,現実,現実味,理由,理解,理論,環境,生きるため,生命,生活,生物,発揮,的,矛盾,知性,破壊,社会,秀吉,私,科学,積極,紙,組織,結局,繊細,織田,義昭,者,耳,能力,自ら,自分,自然,自身,薬,行動,行為,複雑,言葉,説,謙虚,譲歩,豊臣,象,貪欲,資本,起因,足利,身,軍事,連鎖,進歩,過信,道,適応,陰謀,高度,鯨,

■経験語彙 47種 63個 (種類率75%) 89点
しまう,せる,つける,できる,は言える,ぶつかる,もらえる,やり遂げる,れる,乗り越える,交ぜる,使う,傾ける,助ける,取り合う,取る,合う,合わせる,呼べる,回る,失う,学ぶ,届く,帯びる,広がる,得る,惜しむ,抑える,折る,拒む,持ち寄る,持つ,滅ぼす,生きる,秀でる,終わる,織る,脅かす,補う,見合う,起こす,通れる,避ける,陥れる,離れる,頼る,食う,

■総合点 102点

■均衡点 5点
 

協調すること
   高1 あうては(auteha)  2025年11月3日

 鯨やぞうが高度な『知性』を持っていることは、たぶん間違いない事実だ。しかし、その「知性」は、科学技術を進歩させてきた人間の「知性」とは大きく違うものだ。人間の「知性」は、自分にとっての外界、大きく言えば自然をコントロールし、意のままに支配しようとする、いわば「攻撃性」の「知性」だ。そのために、人間は大量殺戮や環境破壊を起こし、地球全体を生命の危機に陥れている。これに対して鯨や像の持つ「知性」は、いわば「受容性」の知性とでも呼べるのものだ。彼らは自然をコントロールする代わりに、この自然の持つ無限に多様で複雑な営みをできるだけ繊細に理解し、それに適応して生きるためにその高度な「知性」を使っている。私たちは象や鯨の知性に学ぶべきだろう。

 第一の方法は自分の能力を過信しないことだ。自分一人でやり遂げることももちろん大切だが、他の人と力を合わせることでできることの幅は大きく広がっていく。普段から周りの人の意見に積極的に耳を傾けたり、協力し合っていると、いざ自分一人の力で乗り越えるのは困難な壁にぶつかった時にも周りの人に助けてもらえるだろう。普段から周りと協調することを拒んでいる人がいざとなった時だけ周りの人からの協力を得るというのは難しいだろう。つまり、貪欲は必ず身を食うというように、謙虚な心を常に失わず、他人と手を取り合って生きていくことはとても大切である。本当に一人だけの力で生きていこうとすれば山の中でサバイバル生活になってしまう。個々人が自分の能力に見合ったできることを分担し、補いながら生きていくべきだ。

 第二の方法は、攻撃や破壊といった暴力的な行為に頼らないことだ。憎しみの連鎖という言葉があったりするように、暴力は即効性のある薬ではあっても持続的なものではない。力で抑えつけても心が離れていればいつかは終わりが来る。自然に対してもそれは言える。人間も他の生物と同じように地球に生きる生物だ。つまり、環境破壊は短いスパンで見れば人類の生活を便利にしていても、いつかはそのツケが回ってくる。環境破壊は人類の母星を大きく変化させているからだ。織田信長は敵対する勢力を軍事行動によって屈服させ、排除していった。しかし結局は明智光秀によって暗殺されしまった。理由は、個人的な恨み、いつかは自分も排除されるのではという恐れ、元将軍足利義昭の陰謀など様々な説があるが、いずれにしても信長の攻撃的、排他的な性格に起因できる。一方で豊臣秀吉は軍事行動のほかに譲歩、懐柔、協調を織り交ぜて使うことで天下を取ることができた。暴力に頼る者は暴力に滅ぼされるのだ。

 確かに避けては通れない争いもある。資本主義と社会主義といったその根本に矛盾があったり、自らの体の安全が脅かされたりした場合だ。しかしそれでも共存できる道を模索する努力を惜しむべきではない。紙はそれ自身は薄かったとしても42回折れば理論上は月まで届く。現実的ではないが、各国、各組織が互いに技術を持ち寄ってそれぞれの秀でている分野で能力を発揮すれば今より人類の科学は進歩するのではないか。少なくとも個人単位ではそれは現実味を帯びているだろう。