彩りを運ぶ電車(清書)

   小4 はるまき(akoruka)  2025年11月4日

    彩りを運ぶ電車(清書)

              はるまき

 「九時十五分の電車だから、そろそろ行こうか。」

私の家には車が無いので、習い事に行くときも、お出かけするときも、父だったら仕事にいくときも、いつも電車に乗る。祖父母の家に行くときも、電車に乗ることが大半である。私がまだ一人で電車やバスに乗ったことがないのもあって、電車は、移動だけではなく、家族とのつながりにも欠かせないのだ。

 二つの家を持っている祖父母が中心的に住んでいる京都府嵐山では、「嵐電」に乗っている。嵐電は、濃い紫色をした一両の路面電車。春には桜が見え、秋には山の紅葉が見えるため、観光客の方々もたくさん乗車している。

「そろそろ嵐山かなぁ。」

と思いながらゆっくりと景色を眺めていると、いつも急に、

「嵐山〜に〜おこしやす〜、井筒八ツ橋本舗〜」

と名産の八ツ橋のアナウンスが流れる。これが聞こえると、私と祖父母は顔を見合わせ、

「井筒八ツ橋本舗〜」

と思わず一緒に口ずさんでしまう。嵐電に乗ってこのアナウンスが流れると、旅の始まりのような気分になって、なんだかワクワクするのだ。

 また、母の地元の大阪府新光風台には、「能勢電鉄」という、大阪府と兵庫県をつなぐ電車も走っている。赤みがある上品な小豆色をしていて、地元の人からは「のせでん」と呼ばれているらしい。私も長期休みにお世話になっている能勢電鉄に乗ることを、若い頃の母はとても楽しみにしていたそうだ。

「のせでんって、森に囲まれているから景色が綺麗だよね。だから、仕事で都会に行ったときの帰りに能勢電鉄に乗ると、リフレッシュできたんだ。」

なるほど、能勢電鉄の景色を、仕事のご褒美のように楽しんでいたのか。

「それでねぇ、今は残念ながらなくなっちゃったんだけど、クリスマスにはトンネルの中とかでたくさんイルミネーションをしてて、毎年楽しみだったなぁ。」

しみじみと語る母を見て、電車は、日常的にあるからこそ、乗ると何だか落ち着くのかなぁと考え始めた。

 電車は、時には旅のワクワクを深めてくれ、時には日常をさりげなく彩ってくれる。そんな電車に乗ることを楽しんで、毎日を充実させたいと心の中で思った。今日もガタンゴトンと走り出した電車の窓には、美しい夕焼けがうつっていた。