私たちは手を上げようと

   中2 あえもま(aemoma)  2025年12月1日

 経験と言葉が結びついて行動が起こる。スポーツの専門用語などでは実際にその経験がないとなかなかできない。逆に「失敗してしまったら」と考えると、余計に行動が制限され、成功する確率が低くなる。私たちは絶えず自己暗示によって行動しているのだ。

 言葉が行動に力を与えてくれる場面は、たしかに存在する。私が習っているおことでも、それを実感したことがある。あるとき、弦をはじく強さが分からず、音が硬くなってしまうことに悩んでいた。すると先生は、「糸をそっと持ち上げるような気持ちで弾いてごらん」と、たとえを使って説明してくれた。その言葉のイメージを意識してみると、驚くほど音が柔らかく変化し、自分でも上達をはっきり感じることができた。言葉によって、行動が前向きに変わる瞬間だった。さらに、学校での発表が嫌で悩んでいた時があった。そのことをお母さんに相談すると、「始まれば終わる、だから大丈夫だよ」と声をかけてもらったことがある。その言葉に押され、私は緊張しながらも発表やり遂げることができたのである。このように、時に言葉には人の背中を押してくれ、勇気を与えてくれる力があるのだ。

 一方で、時に言葉は人の動きを縛ってしまうこともある。昔話の『鶴の恩返し』では、「決して覗いてはいけません」という言葉が主人公の心に強く残り、その禁じられた言葉が行動の制限となった。最初は大切な存在を守るための約束だったはずが、次第に「もし破ったらどうなるのだろう」という欲に変わり、主人公は本来の思いやりよりも言葉に縛られてしまう。結局、その言葉がきっかけで鶴の正体を知り、大切な存在を失うことになった。実体験もある。私は体育の時間友達に「動きがぎこちないね」と言われたことがあり、それ以来自分の動きをより一層意識してしまった。それにより、前までできたことも、緊張してしまいうまくいかなかった。このように、言葉は時に人の判断を迷わせ、前に進む力を奪ってしまう場合もあるのだ。また、それらの人の可能性を奪ってしまう言葉は、軽い気持ちで発してしまうことも少なくはないのである。

 確かに言葉には大きな力がある。しかし、最も大事なことは、言葉自体にあるのではなく、人が人に寄り添うことである。言葉の内容よりも、それを語る人の内面が大切なのだと思う。「誠実さは、沈黙のなかにも伝わる。」という言葉があるように、どれだけ立派なことを言っても、相手のことを思う気持ちや態度が伴っていなければ、その言葉は心に届かない。逆に、たとえ多くを語らなくても、相手の努力を理解し、そばで支えようとする姿勢があれば、その思いは自然と伝わり、行動する力になる。つまり、本当に前向きな行動を生み出すものは、言葉ではなく“寄り添う姿勢”そのものなのだ。