前向きな言葉の価値

   中2 あえさみ(aesami)  2025年12月1日

 経験と言葉が結びついて行動が起こる。スポーツで「腰を入れる」などという言葉は、その経験がないと実行できない。逆に「失敗すると大変だ」という言葉を考えると、それが過去の失敗の経験と結びついて実現してしまうことがある。私たちはたえず自己暗示によって行動している。

 確かに、言葉が行動にプラスの影響を与える面はある。人は、誰かにかけられた言葉をきっかけに、自分では気づかなかった力を発揮したり、一歩踏み出したりすることがある。前に、スキーで思うように滑れず、思うように結果が出ず、落ち込んでいたとき、コーチから「お前ならできるよ」と声をかけられた経験がある。その一言は根拠のあるアドバイスではなかったかもしれないが、私の中の消えかけていたやる気をもう一度灯してくれた。結果として練習に向かう姿勢が積極的になり、以前より成長を感じられるようになった。また、人に対してだけでなく、自分自身にかける言葉も行動に影響を与える。試験前に「もうだめだ」と思うのか、「ここまで頑張ったから大丈夫」と言い聞かせるのかで、机に向かう気持ちは大きく変わる。前向きな言葉を選ぶことで、不安を少し和らげ、集中力を取り戻すことができる。もちろん、言葉だけで何もかもが変わるわけではない。しかし、行動の背中をそっと押してくれる力は確かに存在する。人は言葉で傷つくこともあるが、同じように言葉によって勇気づけられ、良い行動へと向かうこともできるのだ。だからこそ、私は日々の中でできるだけ温かく前向きな言葉を選びたい。

 しかし、言葉が行動のブレーキになることもある。昔話の「三年寝太郎」には、その典型的な場面が描かれている。寝太郎は三年間も働かず寝てばかりいる青年だったため、村人たちは「怠け者だ」「何を言っても無駄だ」と陰口を言い続けた。その言葉のせいで、寝太郎はますます行動する気を失い、村人たちも彼に期待を寄せることをやめてしまった。周囲の否定的な言葉が、本人にも周囲にもブレーキをかけていたのである。ところがある日、寝太郎は突然起き上がり、村のために大きな堰を作る計画を立てる。しかし最初は誰も信じず、「寝てばかりのくせに」「できるはずがない」と嘲笑した。こうした言葉は寝太郎の行動を止めようとする強い力になったが、彼はあえて耳を貸さずに作業を進め、ついに村に水を引くという大仕事をやり遂げた。すると村人たちの態度は一変し、寝太郎を見る目も変わった。この物語は、言葉が人の行動にどれほど影響を与えるかを教えてくれる。何気なく放たれた否定的な言葉は、意外と人間の勇気を奪い、挑戦する気持ちさえ押しつぶしてしまう。しかし、もしその言葉がもう少し温かいものであれば、寝太郎はもっと早く力を発揮できたかもしれない。だからこそ私は、誰かの行動を必要以上に止めてしまう言葉ではなく、前に進むための言葉を選びたいと思う。

 確かに言葉には大きな力がある。しかし、一番大切なことは、言葉に振り回されないことだ。言葉は時に、偏っていたり、間違っていたりする。何が正しいのかを自分で判断しなくてはならない。言葉はきっかけにはなるが、成功も失敗も、自分が動かないかぎり起こらない。良い言葉でも受け取り方で変わる。自分を信じることが挫折に負けない心につながると思う。「楽観は成果につながる信念である。希望なしでは何も成し遂げられない。」とヘレンケラーはいった。前向きに自分の言葉や直感を信じて行動していきたい。