知的で読みごたえのある文章でした。思考の広がりに感心しました。
<<え2019/165pみ>>
【総評】
「文化」という抽象的な概念を見事に論理的にとらえ、他文化への理解と受容の必要性を説いた意見文です。導入の哲学的な視点から、身近な体験、歴史的な具体例までをうまくつなげており、高校生らしい深い思索が感じられます。また、四段落構成が明確で、それぞれの段落において主張と根拠がしっかり対応しており、説得力のある構成になっています。
【段落ごとの講評】
第1段落:文化を「記号体系」としてとらえる視点が非常に鋭く、序論としての役割をしっかり果たしています。「文化は自立性を獲得し、その創造者を呪縛する」という表現に象徴されるように、抽象的な概念を自分の言葉で深く掘り下げられています。また、「受け入れるべきだ」という主張が明確に示され、今後の展開への期待感を抱かせます。
第2段落:他文化の言語や明治期の事例を用いて、他文化の有用性を多角的に説明しています。北海道方言の「いずい」という例は非常に印象的で、読者にとっても共感を呼びやすい内容です。明治の歴史を取り上げた点も評価が高く、文化の導入がもたらす「進歩」について具体的な裏付けができています。比較の視点と時間軸の活用も巧みです。
第3段落:食文化の例から文化的違和への反応という心理面にまで言及し、身近な体験を通じて読者の共感を得ています。実体験が具体的に描かれており、「異文化には異なる考え方がある」という主張が説得力を持って伝わります。「慣れていないことへの忌避」といった心理的側面に踏み込んだ分析も見事です。
第4段落:「郷に入っては郷に従え」ということわざの引用を使いながらも、「二つの文化を知るものは一つの文化に安住するものの倍の世界を生きる」という光る表現で、文化的多様性を受け入れることの価値を力強く訴えています。結びとして、冒頭の主題としっかり対応しており、意見文全体がきれいにまとまっています。
★ことわざの加工例 郷に従うだけでは、世界は広がらない。
【特に優れていた点】
・文化の抽象的概念を的確にとらえ、自分の主張に昇華している
・言語・歴史・体験と多様な根拠を用いた説得的な展開
・ユーモアや印象的な例を交えた、読みやすく興味深い文章
・自作名言を取り入れて、意見を印象づける工夫ができている
【考えを深めるための質問】
文化の違いによって生じる「誤解」や「対立」が起きたとき、あなたならどのように向き合いますか?
字数/基準字数:1192字/1000字
思考点:74点
知識点:90点
表現点:88点
経験点:82点
総合点:87点
均衡点:4点
■思考語彙 19種 23個 (種類率83%) 74点
確か, 第,。しかし,。つまり,。例えば,いると,ことによって,それに対し,だろう,とらわれざる,ならば,なると,は例えば,世界に対して,出来上がると,受け入れるべき,文化によって,枠組みによって,見ると,
■知識語彙 76種 120個 (種類率63%) 90点
一番,一目瞭然,一言,一語,世界,主体,交流,人間,体系,優先,光景,内側,初期,創造,勉強,北海道,単語,印象,呪縛,回復,国力,場面,多様,多角,嫌悪,学校,安住,尊重,幕末,建物,形容,忌避,恣意,意味,感情,抑圧,文化,方法,方言,日本,日本人,日本語,明治,有用,有益,枠組,歴史,混沌,煉瓦,物事,状態,獲得,現在,理解,秩序,種類,積極,純粋,自分,自国,自立,自身,表現,複数,西洋,解釈,言葉,言語,記号,認識,進歩,違和感,開国,集団,風景,飛躍,
■表現語彙 132種 234個 (種類率56%) 88点
確か,こと,これ,ずい,それ,それら,たくさん,たち,ところ,もの,やり方,よう,ガス,グローバル,タグ,一,一つ,一番,一目瞭然,一言,一語,世界,中,主体,二,二つ,交流,人間,他,体系,倍,優先,先々,光景,内側,初期,創造,勉強,化,北海道,単語,印象,呪縛,回復,国力,場面,多様,多角,妙,嫌悪,学校,安住,尊重,幕末,建物,形容,忌避,性,恣意,意味,感,感情,我々,所,抑圧,文化,方,方法,方言,日本,日本人,日本語,明治,時,有用,有益,服,枠,枠組,枠組み,様々,歴史,母,気,混沌,灯,煉瓦,物事,状態,獲得,現在,理解,的,私,秩序,種類,積極,純粋,絵,考え方,者,肌,自分,自国,自立,自身,街,表現,複数,西洋,解釈,言葉,言語,記号,試み,認識,語,豊か,身,逆,造り,週,進歩,違い,違和感,郷,開国,集団,風景,飛躍,食べ物,鳩,
■経験語彙 42種 56個 (種類率75%) 82点
くれる,しまう,できる,とらわれる,はみ出す,もつ,られる,れる,上がる,住む,作り出す,出来上がる,分かる,化す,取り入れる,取り組む,受け入れる,合う,外れる,広がる,当たる,従う,慣れる,抱く,拓ける,接す,描く,暮らす,生きる,用いる,異なる,知る,窺える,繋がる,繰り広げる,習う,至る,行う,表す,起きる,進む,食べる,
■総合点 87点
■均衡点 4点
多文化交流
高1 あうては(auteha)
2025年12月2日
人間は、混沌と化した世界に対して文化という枠組みによって秩序を回復する試みが行われ、世界を解釈することができるようになった。文化は人間が集団としてある意味では恣意的に作り出した記号体系ではあるが、一旦出来上がるとそれは自立性を獲得し、逆にその創造者を呪縛するようになるのである。人間は文化という枠からはみ出してものを認識さえできないし、また文化はそれらを抑圧している。私たちは、自分たちの文化から外れるものでも受け入れるべきだ。
第一の方法は他の文化の有用性を知ることだ。文化の内側を私たちが住む世界だとするならば、他の文化を知ることは純粋に自分の住む世界が広がるということだろう。つまり、できることの種類がより多様化するのだ。私も他の言語を勉強する中で、日本語では一言では言い難く、複数の語を用いたとしても形容しにくい状態や感情を一語で表現できる単語が他の文化にはあるのが分かった。ちょうど先々週ぐらいに学校で習ったのだが、北海道の方言で、いずいという言葉がある。これは例えば服のタグがずっと肌に当たっている時のような、しっくりこない妙な違和感をバシッと表す単語だ。歴史的にも、日本は幕末に開国し、西洋の文化を積極的に取り入れることによってその国力は飛躍的に上がっていった。明治初期の街の風景を描いた絵を見ると一目瞭然だが、至る所に煉瓦造りの建物やガス灯があったりと西洋の文化によって日本人の世界は大きく拓け、より暮らしやすくなっただろうことが窺える。一つの文化という枠組にとらわれず、他から良いところは取り入れることが、我々自身の文化の進歩にも繋がっていくのだろう。
第二の方法は、積極的に異文化交流をすることだ。人間は慣れていないこと、初めて見るものはどうしても忌避してしまう。例えば食べたことのない食べ物だ。私も母が鳩をおいしいおいしいといって食べていた時に、私自身は食べる気は全く起きなかった。なおさら他の文化のことになると、グローバル化が進んだ現在でもなお、様々な場面において自分たちの文化のやり方とは異なった光景が繰り広げられる。そういった時嫌悪感とさえはいかなくても好印象を抱くことは少ないだろう。それに対し、積極的に他文化と接し合い、異なる文化には異なる物事への取り組み方、考え方があることを身をもって理解していると、目新しいことでも文化の違いとして受け入れやすくなる。
確かに自国の中では自分たちの文化を優先するのが良い。郷に行っては郷に従えというように、文化という枠組みの中ではその秩序に従うのが一番だ。しかし、二つの文化を知るものは一つの文化に安住するものの倍の世界を生きる。他の文化には有益なものもたくさんあるし、また私たちの考え方をより豊かに、多角的にしてくれる。私も自国の文化を尊重しながらも、他の文化に主体的に接していきたい。