混沌と化した世界で

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 人間以外の動物は本能の赴くままに行動するとき、そこには迷いや不安がない。彼らには予め秩序が与えられており自らそれを創り出す必要がない。それに対して人間は、本能の導きを失い、混沌と化した世界に対して文化という装置を創り出すことによってふたたび秩序をとり戻してきたのだ。

人間は文化を通して世界を解釈している。自分の狭い世界を基準として他の文化を忌避するべきではない。

そのための第一の方法は、異なる文化の人に対して排他的に接するのではなく、相手の文化を理解しようと努めることだ。

あんたが今通っている学校、あるいは以前通っていた学校でどのような暗黙のルールがあったか思い出してほしい。私の学校では、制服があるのだが入学式、始業式、終業式などの式典以外の日は私服での登校が許可されていた。もちろん校則上、入学した次の日から私服登校ができるのだがそうはいかないのである。一年生は、入学してから最低でも一週間は制服で登校しなければならないのである。なぜなら、私服で登校すると先輩に目がつけられるからである。このように、各学校で形成されている文化が存在していただろう。暗黙のルール(文化)というのは、入学する前に姉や兄、友達か教えてもらうことができるが転校生はそうともいかない。何も知らない状態で新しい学校生活が始まるのだ。私が中学生のとき東京生まれ、東京育ち女の子が転校してきた。私服や髪型そしてメイクをして登校している姿から都会のかだなと思うところが節々から読み取れた。私の学校では、メイクをしてくる子がいなかったため次第にみんなは彼女を非難の目でみるようになった。彼女の前の高校で当たり前であったことは決して当たり前ではなくそこに差異が生じたのだ。ただ、彼女は私の学校の文化を知らなかっただけであったのだとおもう。だから、本当は彼女を非難の目で見るのではなく前の学校の文化を理解する必要があったのだ。

そのための第二の方法は、子供の頃から異文化に接触する機会を持たせることだ。

日本の女性ファッションモデル、タレントとして活躍している「peco」という方をご存じだろうか。彼女が出演していた教育番組の切り抜きをYouTubeのショート動画でたまたま流れてきた。司会者から息子さんをインターナショナルスクールに通わせようときめたのはなぜですかと質問されていた。私は、芸能人としてのステータスもあり公立の小学校ではなく私立のインターナショナルスクールに居わせているのだろうと思っていた。しかし、彼女の答えには耳を疑った。どうやら、英語を話せるようになって欲しいという思いももちろんあるが、なにより肌の色や母国語、髪の毛、宗教などが違う子たちが多く通う学校という場で当たり前というのがなく世界にはいろんな人がいるということを学ばせるためだとおっしゃった。私自身、肌の色や宗教などで人を差別したことはないが、どこかしら心のなかで異文化にたいする抵抗というものがあったりする。みんな違ってみんないいと思えるその心というのは、小さい頃に異文化に接触する機会を持たせることで形成されると思う。

確かに、ある一定枠の土地において他の文化のすべてを認めると、従来の文化で形成されていた社会の秩序が乱されてしまう。しかし、郷に入っては郷に従えということわざがある通り、自分の文化と違う国にいったときに相手に自分の文化を認めさせようとするのではなく、相手の文化に歩み寄る必要がある。これは、立場が逆であっても入ってきた異文化に歩み寄る必要がある。