実感、追いつけ
高1 あおそふ(aosohu)
2025年12月3日
原動機付自転車で移動すると、肉体は振動する小さなガソリン・エンジンにしがみついているだけだが、神経のほうは、距離と時間を省略することなく体験しつくすのである。そのことにより、肉体と神経とのバランスが崩れるのだ。
私たちは、環境の変化の速さに追いつくような心の実感を持った生き方をするべきだ。
そのためには、第一に、バーチャルな世界よりも、自分の手足を使った実感のある世界をできるだけ体験することだ。
影が短く、熱に輪郭を与えられる世界にいるように感じる夏の季節には海水浴に出かける人が多くみられる。私自身、小学生の夏休みに海水浴に訪れた。海中で浮遊している台から飛び降りるアスレチックが設置されており、私も一緒にきていた他の子につれられ海に飛び降りたのだ。飛び降りてから身体を浮かばすことができたものの、次から次へと押しおせてくる波により顔を覆われ呼吸することができなかった。そのとき初めて、自然の恐ろしさを身にもって体験した。海や川といった避暑地に訪れる人々に対してよく「自然をなめるな」という注意喚起がおこなわれる。注意喚起はしているものの、毎年、海の事故での行方不明者、死者数は後を絶たない。令和六年には、八一六人の行方不明者、死者数が出た。メディアからの情報を耳にしても所詮他人事のように片づけてしまいあまい考えが事故につながる一つの要因であると思う。こうした体験は、バーチャルな情報だけでは得られない、だから自分の身体を通した実感のある世界に触れることが大切なのだ。
しかし、逆に、新しい時代に対応した実感を育てていくことも必要である。
最新機械の登場により、私たちを取り巻く環境の変化の速度はより速くなってきているように思う。第一次世界大戦のときに、戦車、潜水艦、飛行機といった新兵器の登場により、従来の近接戦闘が多く、戦場は限定的な戦争ではなく敵との距離をある程度とることができ、一瞬で沢山の人々を殺す戦争へと変化をとげた。このように、新兵器により戦争のあり方が変化した。現代社会において、ドローンが戦争のあり方を変える鍵となっていると思う。人が直接乗らずに操作される航空機(無人機・ドローン)を使った無人機戦争というのは、操縦者が戦場にいないため自国の兵士が直接命を落とす可能性が低くなる。戦争というのはたくさんの戦死者を出すため無人機による戦争というのは理にかなっている部分がある。しかし、戦闘中の恐怖からフラッシュバックや悪夢、過覚醒、抑うつ、不眠などの症状をひきおこすPTSDの解決にはならない。なぜなら、無人機戦争では、昼に無人機を使って攻撃をし、夜は家族と普通の生活を送るという戦争と日常が地続きになり心の切り替えができず、精神的負荷が蓄積してしまうからだ。また「自分は安全」という感覚で無人機を操作して攻撃できてしまうので戦争が現実感の薄いものになりやすい。戦争が画面越しの操作に変わりつつある今だからこそ、バーチャル化した現実に流されず、行為の結果や責任を自らの感覚として受け止める、新しい時代に対応した実感を育てていくことが必要である。
確かに、環境の変化のあまりの速さにはマイナスも多い。しかし、私たちは肉体と神経の乖離を極限まで抑えるためにも、環境の変化を止めるのではなく私たち自身がその変化に対応していくべきだ。