産業革命以来、機械は

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 産業革命以来、機械は人々の生活を豊かにするものだと思われて来た。

 「二十世紀は機械文明の時代であったが、二一世紀は生物文明の時代になる」というような言葉が使われている。これもまたそのことを示唆するとみてよいであろう。いまここで述べてきたことは、デザインの分野についてもあてはまることである。

 これまでの建築は芸術性と工学的な技術に重点がおかれていた。建築学が一つ一つの独立した建物をつくる技術であった段階まではそれでよかったであろうが、建築もインテリアも本当に人間のためのものになりえないということが、いま反省され始めようとしている。

 住まいの環境が美しくあることは、たしかに望ましいことにちがいないが、芸術第一主義では庶民にはとても住めない。庶民は人間であるよりもさきに、まず生物で、生物は本来もっと泥臭いものだということが、いつの間にか忘れられていた。それに気がついたわけである。

 整った外観よりもなじみやすいことの方が大事だ。

 その理由は整った環境よりも自分が慣れた環境の方が落ち着くからである。

 例えば、僕が飼っているハムスターのポムはケージを掃除して床材を新しく取り替えるとポムが警戒して全ての餌を頬袋に入れてケージの中をウロウロして落ち着かなそうにして脱走したそうにしている。そして、なんとか落ち着いたと思ったら床材を一か所に集め、せっかく敷いたペーパータオルをビリビリにして床材の一部にしてしまう。

 僕も部屋が整ったホテルより家のリビングのほうが落ち着く。旅行から帰ると実家の安心感を感じるのである。また、僕は家の家具の位置がずれているとすぐに直してしまう癖がある。それはいつもと違って落ち着かなくなるからだ。

 「馴染みのない環境では落ち着かなくなる」ことは、心理学・神経科学・行動科学の分野で実証データがある。

これは「慣れた状態」を基準に周囲を判断している脳の仕組みによるのだそうだ。

たとえば家具の位置は、普段は意識しなくても脳が正確に記憶している。

いつもと同じ配置であれば、脳は考えなくても動けるため、安心して省エネ状態で過ごせる。

例えば、家具の位置が変わると、脳は同じ部屋でも「馴染みのない環境」と判断する。

その結果、脳の警戒モードが働き、落ち着かない・集中しにくい・疲れやすいと感じる。

不快感の理由が分からなくても、体と脳は反応している。

家具を元の位置に戻すと、脳が覚えていた「安全な配置」に戻るため、安心感が回復す  る。

これは気分の問題ではなく、脳の正常な働きによるもの。

 その結果、脳は一時的に警戒モードに入り、 そわそわ・緊張・疲れやすさとして表れる。ただし、この反応は一時的なもの。 同じ配置を何度も経験し、動きが予測できるようになると、 脳は再び「安全」と判断し、落ち着きが戻るのだそうだ。

 

 たしかに部屋を綺麗にすることはいいことだけど「落ち着かないのは、その場が悪いのではなく、まだ心が居場所を見つけていないだけ。」という言葉のように自分が馴染みのある心が落ち着くような環境が大切である。