自分自身をここまで深く見つめ、言葉にしようとした勇気と誠実さが強く伝わってきました。ユーモアのセンスも抜群(ばつぐん)です。

<<え2016/61pみ>>

【総評】
 「自分は特別な存在ではない」という認識に至るまでの思考の軌跡(きせき)が、非常に論理的かつ内省的に描か(えがか)れた意見文です。読書体験から生まれた疑問を出発点に、謙虚(けんきょ)さと視野の拡大という二つの方法を提示し、最後に「自信」という反対概念(がいねん)取り込み(とりこみ)ながら主題を立体的に総合化しています。抽象(ちゅうしょう)的なテーマでありながら、具体例や比喩(ひゆ)、歴史的事例を効果的に用いることで、高校一年生として高い思考力と表現力を示しています。

【段落ごとの講評】
第1段落:自己の内面から出発し、読書体験を通して「自分と他者の関係性」へと思考を広げています。他者もまた同じように通じ合えなさを抱え(かかえ)ているのではないか、という仮説に至る展開は、主題設定として非常に深く、読む側に強い思索(しさく)促し(うながし)ます。

第2段落:第一の方法として「謙虚(けんきょ)さ」を掲げ(かかげ)、自身のテスト経験を用いて説明している点が秀逸(しゅういつ)です。主観的な自信と客観的な評価との差を「蜃気楼(しんきろう)」という比喩(ひゆ)で表現し、自分を一歩引いて見る視点の重要性を説得力をもって示しています。

第3段落:第二の方法として「世界を広げること」を提示し、ことわざを引用しながら論を展開しています。「他人の他人は自分である」という独自の言い回しは、抽象(ちゅうしょう)的な内容を印象的に定着させる効果があります。自己を集合の一要素として捉える(とらえる)視点が明確です。

第4段落:自信の価値を正面から認め、歴史的事例を挙げて反対意見への理解を示しています。その上で、安定や現実認識とのバランスへと話を進めており、意見文に求められる「総合化」が高い次元で達成されています。

【特に優れていた点】
抽象(ちゅうしょう)的なテーマを、読書体験・学校生活・歴史実例で具体化できている
・自分の弱さや思い込み(おもいこみ)を正面から見つめ、論理的に言語化している
・賛否を対立で終わらせず、より高い視点でまとめている

【考えを深めるための質問】
 もし「自分は集団の中の一人に過ぎない」という認識を持ちながらも、あえて強い自信を持って挑戦(ちょうせん)するとしたら、あなたはどんな場面でそれを選びますか。

字数/基準字数:1261字/1200字
思考点:77点
知識点:91点
表現点:89点
経験点:98点
総合点:90点
均衡(きんこう)点:2点

 


■思考語彙 24種 37個 (種類率65%) 87点
 確か, 第,。しかし,。一方,。例えば,が確か,すれば,だろう,てこそ,に考える,のに対し,はなぜ,は可能,ももちろん,を考える,抜け出さざる,求めよう,経験により,考えるば,自分にとって,自身にとって,買えば,車によって,関わらざる,

■知識語彙 70種 98個 (種類率71%) 86点
一方,一生,世界,人生,仕事,以外,何者,充実,冒険,冷静,分析,加藤,効率,危険,唯一,商品,困難,場所,変化,大事,大陸,存在,学校,封印,市場,希望,帰宅,情熱,意味,感動,打算,挑戦,散歩,文化,文太郎,新鮮,方法,旅先,旅行,日常,日本,時間,最後,最期,最高峰,植村,消費,満足,無二,熱望,現代,現地,直己,社会,移動,経験,肝要,自体,自分,自身,蓄積,行為,軍資金,連続,金鉱,限界,雰囲気,非常,頂上,高額,

■表現語彙 130種 216個 (種類率60%) 87点
 確か,お金,が確か,こと,これ,さ,それ,たち,ところ,は可能,もの,よう,わけ,エベレスト,スマ,ホ,リスク,リターン,一,一つ,一方,一生,世界,中,事,二,五,人々,人生,仕事,代わり,以外,何,何もかも,何者,充実,先,冒険,冬,冷静,分析,加藤,効率,危険,命,唯一,商品,喜び,困難,国,場所,変化,大事,大陸,存在,学校,封印,市場,希望,帰宅,度,彼ら,心,怒り,悲しみ,情熱,意味,感,感動,打算,抜き,挑戦,散歩,数々,文化,文太郎,新鮮,方,方法,旅,旅先,旅行,日,日々,日常,日本,時,時間,最後,最期,最高峰,朝起き,植村,様々,消費,満足,点,無二,熱望,現代,現地,的,直己,社会,私,移動,経験,肝要,自ら,自体,自分,自身,色々,蓄積,行為,豊か,身,車,軍資金,通り,連続,重み,金鉱,限界,雰囲気,非常,頂上,駅,驚き,高額,

■経験語彙 48種 72個 (種類率67%) 91点
いける,おく,かかる,さらす,ざわめく,できる,に考える,のぞく,られる,れる,を考える,作る,動かす,呼べる,喜ぶ,変える,失う,委ねる,帰る,得る,感じる,成り立つ,抜け出す,持つ,挑む,接す,望む,残る,気づく,求める,満たす,生まれる,異なる,登る,突く,終える,続く,繰り返す,置く,解く,触れる,貯める,買う,超える,過ぎる,違う,関わる,響く,

■総合点 96点

■均衡点 8点
 

旅をする
   高1 あうては(auteha)  2026年2月2日

 私たちは未知と偶然の要素を多く含んだ旅に出る時、どこかへ行きたいとか何かを調べたいなどといった何らかの意味で目的を持った自分の意思とは別に、一種のあやしい胸のときめきを感じる。旅先で見たものや聞いたものはしばしば私たちに新鮮な驚きを与え、旅先で出会った出来事はしばしば私たちに強い感動を与える。人間がもともと持っている生き生きとした感受性を取り戻すことである。普段の生活、日常生活のだせいから自己を解き放つことなのである。偉大な情念によって初めて、人間の魂は偉大な物事に到達しうるのだ。私は旅をするべきだと思う。

 第一の方法は情熱を持つことだ。ルーティン化した生活を日々淡々とこなすだけでは人生において最後に残るものは少なくなる。半義務化された仕事を毎日繰り返して一生を終えるのはつまらない。それよりも、小さな事、大きな事、あらゆることにおいて非日常を望み、変化を求め、冒険心や希望の封印を解き、身を委ねる方が生まれる喜びは大きい。その一つに旅がある。新しい場所、新しい文化、何もかもが異なる世界に触れられる。これは非日常以外の何者とも呼べないだろう。いつも通りに朝起き、いつも通りに学校に行き、いつも通りに帰る1日と、旅行先の新しい国で様々な驚き、感動、楽しさに満たされた1日、この時間的には全く同じものは自分自身にとっての重みという点で全く異なる。一方が一生に一度の経験の連続であるのに対し、もう一方は何日も何日も延々と続く同じような日々の一つに過ぎない。私たちは変化を求めようとすればいくらでもそれは可能である。帰宅中に大きな駅で散歩をしてみるだけでも新鮮な驚きが得られるだろう。肝要なのは、変化を熱望する情熱を持つことだ。

 第二の方法は打算的にならないことである。旅というのはとてもお金のかかるものだ。お金の事を考えれば旅をする時間で仕事をした方がよっぽど効率が良い。スマホを買えばお金を失う代わりにスマホを得られる。しかし旅というのは高額なお金を消費したところで何かを得るわけでもない。打算的に考えれば旅なんてしない方が良いのだ。けれども植村直己はなぜ五大陸の最高峰に登ったのか。加藤文太郎はなぜ冬の挑んだのか。冷静に考えれば危険極まりない行為である。エベレストの頂上に金鉱があったわけでももちろんない。彼らを突き動かしていたのは打算を抜きにした冒険心であったのだろう。リスクとリターンを冷静に分析すれば、命を危険にさらしたところで何も得られない冒険なんかには挑まない。しかし、自分のコンフォタブルゾーンを超えて、限界に挑戦することで、お金では得られない充実感、経験により人生を豊かで満足のできるものに作り変えていける。

 確かに日常抜きには非日常は成り立たない。日々の仕事があってこその軍資金だ。現代社会ではお金なしで移動をすることは極めて困難だ。お金があってこそ旅ができる。しかし、かといって日常から抜け出さず、非日常の世界をのぞいてみないのは非常に勿体ない。人生において大事なのは経験である。お金をいくら貯めておいてところで最期には自分にとっての意味失う。例えば私たちが車を買う時、実際には車によって得られる経験を買っているのだろう。そのように考えれば商品のあるなしに関わらず、旅をすることはそれ自体が唯一無二の意味を持っている。私は旅先で現地の市場に身を置いて日本とは全く違う雰囲気、ざわめき、人々の接し方に、色々な心に響くもの、感じるものがあることに気づいた。人生において最後に残り、意味を持つのは自らが経験し、蓄積されてきた数々の驚き、感動、悲しみ、喜び、怒りだ。旅をすることでしか得られないものが確かに存在している。