鑑賞と熱狂

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 大相撲では呼び出しから仕切り、立ち会い、組み合い、そして勝負までの次第に盛り上がっていくはずの気迫感が全くない。テレビの相撲中継では、制限時間いっぱいになってから観客の声援を入れるよう演出されている。実際に仕切りから取組中にかけての緊迫した空気と力士の呼吸を感じるため、声援は控え、静かに拍手で見守るのが大相撲の観戦マナーである。一方で、音楽ライブの歓声は比にならないほど異常である。2024 MAMA AWARDSでのBIGBANG復活のBang Bang Bangは大熱狂だった。実際にその場所にいなくても、動画を見るだけで熱気が伝わってくるほどだ。観客みんなで応援したり、盛り上げたりすることによって、演じる人と見る人が一体となることができる。隔たりを作るのではなく、ライブにおいても試合においても、常に観客が参加することを考えていきたい。

 まず、参加しやすい空気をつくっていくことが大事だ。学校でSDGsのために取り組んでいるプロジェクトがあるのだが、学校だけではどうしても間に合わなくて、家でオンラインミーティングすることになったことがある。私はその日用事があったため、集合より1時間遅れての参加となった。しかし、集合から1時間経ち、人もおおよそ揃っているにも関わらず、何の話し合いも行われていなかった。だから、「こんにちはー」と不安になりながら話しかけると、すんなり会議を始めることができた。参加していた人によると、話しかけるタイミングがわからなくて、長い間無言状態が続いていたそうだ。人だけの話ではなく、動物もそうだ。例えば、ファーストペンギンは、天敵がいるかも知れない海へ群れの中で最初に飛び込む。何事も初めに何かをするということは勇気のいることだと思う。ライブや試合でも、歓声を出すのも最初の人がいるからこそ盛り上がりがある。そもそも、勇気を出さないと熱狂がうまれないという状況は良くないと思う。みんなで楽しむために自然と観客全員が参加しやすい空気を作っていくことが大事だと思う。

 次に、上に立つ人がなんでもやりすぎないことだ。江戸城無血開城では、勝海舟と西郷隆盛による交渉で成し遂げられた。坂本龍馬の構想した大政奉還の後、江戸総攻撃を阻止して100万人の命を救った平和的な幕引きであり、2人の信頼関係と時代を見通す目が生んだ奇跡的快挙である。血を流さずに新しい政府を作るための平和的な改革だ。本来、上に上り詰めるためには周りのことを気にせず、自分1人で突き進んでいくものだと思う。しかし、坂本龍馬は平和的な政府にするため、1人で何事も決めるのではなく、話し合いを通じて平和なものへと変えていった。コンサートやライブ、試合では騒いではいけないというルールがついているものもある。しかし、観客自身がそれを望んでいない場合もある。だから、上に立つ人だけが決めるのではなく、見ている人も実際に話し合いを通じて納得していくことが大事だと思う。

 SNSが普及して人と人との距離が遠くなってしまった一方で、音楽やスポーツなどは人を癒やし、繋げてくれる存在である。”Happiness only real when shared.”(幸せは、共有されたときにのみ真実となる)という言葉があるように、人はみんなで同じ幸せなことをすることによって、団結力が生まれていく。幸福は演じる人だけで成り立つのではなく、見ている人も見ている人同士もわかり合うことでより深くなり、本物へと変わる。だからこそ、立場が異なるだけで壁を作るのではなく、全員で参加していくことを考えていきたい。