お別れの言葉はお守りのよう

    ()  年月日

  「今まで、本当にありがとうございました。」

広い体育館に、嗚咽が響いた。今日は、私が通っている小学校に十一年間もいて、別の学校に行ってしまう、万年ゆうすけ先生の離任式だ。二年生の時に、私は四組だったけど、三組の担任をしてくれていた。万年先生は、全方位の事を上手にこなせて、学校全体の先生や生徒たちから慕われていた、すごい先生だった。だから、今日は結構悲しみが大きかった。

 私が通っている学校では、年度末などに、名札の裏に先生にサインを書いてもらう人が多い。そのため離任式の後にも、万年先生のところに、学年関係なく長蛇の列ができていた。私も万年先生にサインを書いてもらおうと列に並び、十五分ほど待って順番が来た。

「元気にしてる〜!?」

早速名札の裏にサインを書いてもらうと、色々な思い出がよみがえってきた。クラスが違う人とも、一緒に鬼ごっこをしてくれた思い出。終業式で修了証書をもらう代表の時に、おじぎの仕方などを教えてくれた思い出。万年先生は、万年生きられそうな、本当にすごい先生だった。他の学校に行ってしまうのは悲しいけれど、心から感謝をしたい。

「これからも頑張ってくださいね!」

「ありがとうございます!」

万年先生の言葉と名札の裏のサインは、今もお守りのように、私の背中を押してくれる。

 母にも、そんな思い出があるそうだ。

「仕事場の先輩が辞める時、一人一人に手紙を書いてくれたんだ。その先輩とはあまり関わりが無かったんだけど、すごく細かく自分の良さとかを書いてくれてて、見てくれていたんだなぁと感激したし、自信がついたよ。」

確かに、誰かと別れる時にもらった手紙などは、私の名札と同じように、自分を支えてくれる。別れる時しか得られない、大切なメッセージのようなものが、あるのかもしれないと思った。

 誰かと別れるのは、すごく悲しい。だけど、その時にもらった言葉などが、ずっと背中を押してくれるという事がわかった。だから、お別れをぐずぐず悲しまずに、もらったメッセージに感謝したい。私は、名札の裏のサインを見て、心の中で「ありがとうございました。」とつぶやいた。