「手間」と「生きる喜び」を結びつけて考えているところに、深い視点と強い意志を感じました。

<<え2020/228jみ>>

【総評】
 この作文の最も優れている点は、「手間をかけることの価値」を(じく)に、一貫(いっかん)した主張を展開している思考の明確さです。文明の発達という大きな視点から出発し、人との関わりや物の見方、自分の体験へと広げている点に、論の広がりと深まりの両方が見られます。また、具体例としてオンラインと対面の違い(ちがい)や、ジャムの(びん)の再利用を挙げていることで、抽象(ちゅうしょう)的な主張に実感が伴っ(ともなっ)ています。自分の考えを多角的に支えようとする姿勢に、しっかりとした思考力が感じられる作品です。

【段落ごとの講評】
第1段落:文明の発達と「手間」の関係を対比的に捉え(とらえ)、主題へとつなげている点が非常に優れています。「生きる喜び」との結びつけも明確で、抽象(ちゅうしょう)度の高い内容を自分の言葉で表現できています。問題提起として力強い導入です。

第2段落:第一の方法として「対面での関わり」を挙げ、具体的にオンラインとの違い(ちがい)を説明している点が分かりやすいです。情報の質や理解の深さに着目している点に着眼の良さがあります。身近な社会状況(じょうきょう)と結びつけているため、説得力のある段落になっています。

第3段落:第二の方法では「多面的に見ること」を提示し、具体例としてジャムの(びん)の再利用を挙げている点がとても良いです。自分の生活の中での実践(じっせん)が書かれており、「手間をかける価値」が実感として伝わります。抽象(ちゅうしょう)と具体のバランスが取れています。

第4段落:反対意見にしっかり触れ(ふれ)た上で、自分の主張をより深く補強しています。効率との対比や名言の引用により、「過程の価値」というテーマが強く印象づけられています。全体を引き締める(ひきしめる)、説得力のある結びです。

【考えを深めるための質問】
 これからの生活の中で、「効率を優先するか、それともあえて手間をかけるか」で迷ったとき、あなたはどのような基準で選択(せんたく)していきたいと考えますか。

字数/基準字数:1277字/600字
思考点:95点
知識点:85点
表現点:93点
経験点:97点
総合点:97点
均衡(きんこう)点:5点

 


■思考語彙 27種 30個 (種類率90%) 95点
 第,、第,。しかし,。すなわち,。だから,。例えば,。確か,あるかも,しよう,すべき,するため,する可能,そのため,たから,だろう,できざる,と思う,ないから,ないと,なろう,に考える,れる場合,余白によって,失敗によって,広がるため,気づくべき,開く場合,

■知識語彙 68種 97個 (種類率70%) 85点
事実,人間,会話,住民,余地,余白,価値,便利,利用,努力,効率,十分,参加,回収,固定,多面,大事,失敗,対面,工場,年間,役目,微妙,快適,情報,意味,意見,感性,成功,手間,文明,方法,時間,有形,本来,本能,欲求,決定,無形,犠牲,玄関,理解,生産,発展,発見,発言,直接,相手,立派,結果,自然,行動,表情,製造,見方,視点,視線,観念,解釈,説明,資産,過程,重要,開催,面倒,頃合,頑丈,魅力,

■表現語彙 143種 208個 (種類率69%) 93点
。確か,い,ここ,こと,さ,すべて,するため,する可能,そこ,そのため,その後,それら,たくさん,とき,ところ,どこ,ほう,もの,やり取り,よう,れる場合,アインシュタイン,アンテナ,インターネット,ウイルス,オンライン,コロナ,ゴミ,ジャム,トーン,ニュアンス,ペン,レーン,一,一つ,上,中,事実,二,人,人間,代わり,会,会話,住民,余地,余白,価値,便利,僕,分,利用,力,努力,効率,十分,参加,喜び,回収,固定,声,多く,多面,大事,失敗,家,対面,工場,年,年間,広がるため,度,役目,微妙,快適,性,情報,意味,意見,感性,成功,我々,手,手間,数,敵,文明,方法,日,日々,時間,有形,本来,本能,様々,欲求,決定,無形,物,犠牲,玄関,理解,瓶,生き方,生産,発展,発見,発言,的,皿,直接,相手,窯,立て,立派,結果,者,自然,行動,表情,製造,見方,視点,視線,観念,解釈,試み,説明,資産,質,越し,過程,違い,重要,開く場合,開催,限り,際,面倒,頃合,頑丈,顔,魅力,

■経験語彙 52種 72個 (種類率72%) 97点
うる,おく,かかる,くれる,しれる,せる,つかむ,できる,とる,と思う,なさる,にぶる,に考える,もつ,られる,れる,下がる,会う,作る,使う,優れる,入れる,出せる,分かる,劣る,取る,否める,失う,学べる,広がる,張り巡らせる,惜しむ,感じる,挙げる,捉える,接する,果たす,比べる,気づく,求める,流行る,焼く,生きる,生まれる,省く,省ける,研ぎ澄ます,置く,行う,言い合う,買う,開く,

■総合点 97点

■均衡点 5点
 

手間の価値
   中3 あおらえ(aorae)  2026年4月2日

  科学文明の発達は、人間の日常から手間を省いていく。これまで人経験していた手間の数々を片端から省いていった。あらゆるものがそろい、面倒なことは避ければよいからあえて本能的なアンテナを張り巡らせることができずに、決定する力がにぶる。便利さや快適さを求める人間の欲求が文明を発展させたことは事実だろうが、そのために有形無形の人間本来の資産をたくさん犠牲にしてきていることに、我々は気づくべきだ。手間を省く生き方をしている限り、生きる喜びは感じられない。生きる喜びとは、感性を研ぎ澄まし、自然の大きさと人間の魅力を日々発見することにある。だから、手間を省かない、生きる喜びを十分に感じられるような生き方をすべきだと思う。

 そのような生き方をするための方法として、第一に人と直接会うということが挙げられる。ここ数年で、特にコロナウイルスの流行った頃合いからインターネット上でのやり取りが多くなった。確かにスマホ越しでも相手の顔をみられるし、また相手と会話することもできる。しかし声のトーンや視線は分からないから、微妙なニュアンスの違いが分からない。例えば、住民説明会をオンラインで開催するとしよう。対面のときよりも、参加者の表情や発言の際にとる行動、参加者の中での意見の言い合いをしにくい分、理解度は対面で開かれる場合に比べて劣る。対面で開く場合の情報の質や理解の深さは、同じ説明を行ったとしてもオンラインに比べて優れている。

 第二の方法として、物を多面的に、より多くの視点からみるということが挙げられる。すなわち、ある一つの見方に固定されないということだ。より手間にはなるが、固定観念をもって接するときと比べより多くの情報をつかむことができる。さらに、多面的にみることで、解釈に余白が生まれる。その余白によって、解釈の余地が広がるために、より様々な意味で捉えることになる。あるとき、どうしてもペン立てが欲しくなった。よく使うペンをより取りやすいところに置いておきたくなったからだ。買ってきてもよいのだが、僕は買う代わりに家にあったジャムの瓶を利用した。ゴミ回収の日に出せるように玄関に置いてあったのを発見したもので、その後数年間は立派に役目を果たしてくれた。

 省ける手間を省かないと効率が下がるという意見がある。失敗する可能性がある、時間がかかるという意見もある。確かに、それらはすべて否めない。十分に考えうることだ。どこかの窯で皿をいくら作ったとしても、生産レーンで製造する工場には敵わない。試みが失敗し、なにか失うこともあるかもしれない。しかし、アインシュタインは「価値あるものを手に入れるには、価値ある努力を惜しんではならない」といっている。効率が下がっても、じっくり焼いたほうがお皿は頑丈になる。失敗によって学べることも多い。アインシュタインは「成功した人間になろうとするのではなく、価値ある人間になろうとしなさい」とも言っている。結果も大事だが、より重要なのはその過程で、そこに面倒な手間があるのだ。