表裏を知る

   高2 あかぬり(akanuri)  2026年8月3日

 科学が人間にもたらすものには必ず明暗両面が存在する。これは、決して最近始まったことではないが、過去数十年の科学技術の進歩はあまりにも速く、人間と社会とに軋轢を生じてきている。ものごとの本質は単純ではなく、白か黒かを言いきれないことも明らかになってきたのだ。来世紀にますます深刻になる問題についても、一人一人に自分の問題としての思索と決断が求められてくるだろう。そんなとき、科学的知識と広い視野に立った自分なりに納得のいく判断を下せるようになるためには、科学と社会を結びつける良質の情報が必要なのである。

 科学に存在する、明暗両面を理解しないまま利用してしまうことは問題だ。

 第一に考えられる原因は、科学の高度化により、一般の人が理解しにくくなり、受け入れるほかなくなっているからだ。たとえば、スマホがそうだ。二〇〇七年にアメリカでAppleがiPhoneを発表し、日本でも翌年に発売された。それから二年後、二〇一〇年末は世帯保有率が九.七%だったのに対し、二〇一五年末には七十二%とたった五年間で一気に急増した。スマホが一気に普及した要因として、大きく二つ挙げられる。一つは、通信規格の高度化によりすぐにインターネットにアクセスし、動画視聴やアプリのダウンロードができるようになり、スマホでできる幅が広がったからだ。そしてもう一つは、LINEの登録ユーザー同士ならどこでも無料で電話ができるというシステムにより、周りが使っているから自分も、という同調圧力的な広がり方をしたからだと考えられている。このように一気に広がったスマホだが、多くの人はその裏でスマホが脳や生活にどのような影響を及ぼすのかを深く考えないまま使い始めたのだ。高校の友達のK君は、小中は通っておらず、フリースクールに通っていた。それもあってか今まであまり本を読む機会がなかったという。しかし、今ではいろんなものに触れ、読もうとしている。だが彼曰く、「脳がスマホに浸食されてるから、あかんわ。最後まで読めん。気い付いたらスマホ目の前にある。」といつも言っている。実際、高校に入ってからいろいろ本を読もうとしているが、読みきれたものは一つもないとも聞いた。普段はとても論理的で、社会人のような友達なのだが、そんな彼でも読めないのか…と最初聞いたときは本当に驚いた。制作側が、スマホの危険性を積極的に公表してこなかったことも、一般人がスマホによる影響を理解しないまま使い、普及していった一因の一つではなかろうか。

 第二に考えられる原因は、解決を急ぎ、それによる影響を考えずに行動する人が増えたからだ。夏休みになって、神戸の祖父母の家に行った際、祖母からある話を聞いた。祖母は糖尿病なのだが、生活にとても気を遣っており、今は健康でいつもバリバリ動いている。そして祖母の友達で、同じく糖尿病の人がいる。その人は、マンジャロという薬を毎週注射で打っている。祖母から聞いたのはそのマンジャロについての話だ。今マンジャロを糖尿病の薬としてではなく、瘦せるために利用している人が増えているという。元々体には、食事をした後に、血糖値を下げる働きがある。マンジャロに含まれるチルゼパチドという物質は、その働きをするホルモンと似ており、同じ働きをする。そしてもう一つ。マンジャロには食欲を抑える効果もある。そのため、痩せる目的で使用している人がいるのだ。しかしその裏には、問題がある。吐き気や便秘、そして食欲が落ちること自体が生活習慣を変え、新たなリスクを生むという、二次的な影響も懸念されているのだ。それを理解しないまま、痩せられるという情報のみに飛びついて、利用してしまうのは危険なことだと感じる。

 たしかに、科学の明暗両面をすべて理解するまで、実用化しないという姿勢をとっていては、問題解決ができず、そのまま手遅れになる恐れもある。しかし、科学とは、万能のアイテムではなく、自然の摂理に従った縁遠いようで本当は身近なものだ。そんな科学には必ず裏側があると常に考えることで、これから起こり得ることを予測し、予め対策を立てておくことはできるはずだ。そして、科学は身近なものであることを一般の人々がもっと理解していくべきだ。だから、科学に存在する、明暗両面を理解しないまま利用してしまうことは問題だ。