一石二鳥の運動は。

    ()  年月日

 「それっ。」

ボールが宙を舞う。

 わたしが大好きな遊びは、ドッジボールである。近距離からのボールをかわせたときの、あの爽快感はたまらない。クラスで一番強いといっても過言ではないほど、投げることが上手な男の子がいた。そのとき、一番当てやすい位置にいたわたしを狙ったのだろう。かけ声とともに、わたしにボールを投げつけた。わたしはといえば、本能的に気配を感じ、あと少しのところで、ひょいっ、とかわしてしまった。

「えっ――。」

男の子がもらしたその声は、一瞬だけ、校庭に響いた。その直後、わたしはかわしたボールを拾い上げ、こちらのチームのいる強いひとに、ボールをわたした。あっという間にふたり倒し、形勢は逆転した。好きこそものの上手なれだな、としみじみと思う。

「えっ、今のかわしたのっ?」

試合が終わって、わたしたちのチームが勝利に終わった。そのあと、わたしを狙った男の子が、信じられないといった目つきで、わたしを見た。

「ふふーん。よけるのは、得意だからね。」

その子は、ムッとしたように、転がっていたボールを拾い上げて、わたしを狙った。またもやかわす。いたちごっこがおもしろくて、あはははっ、とみんなで笑った。

 母の好きな遊びは、鬼ごっこだった。母は、学年で足がとても速く、運動神経が良いことで有名だったので、背後に迫る鬼や、囲まれてじりじりと後退するときの、わくわく感とスリルを、存分に味わいながらも、華麗にかわすことができる。休み時間、校庭に出て、母が鬼の囲いからするんと抜け出す姿を想像すると、おかしくて、いつでもくちびるの端をヒクヒクさせ、笑いをこらえる。わたしもその場に入れたらな、とつい思ってしまう。

 調べてみると、ドッジボールや鬼ごっこは、健康にもいいそうだ。わたしはいま、ドッジボールがあまりできずにいるが、仲のいい友達と、鬼ごっこをして、休み時間を使っている。健康にいいというのは本当らしく、食欲がわき、元気になった。

 わたしはこの経験をふまえ、好きな遊び、特に運動というものは、一石二鳥だとわかった。楽しいし、健康だし、最高だ。ランニング二十キロメートルよりも、ずいぶんと楽である。また、わたし個人の感覚かもしれないが、ひとをひきこませる力がある。「これやるよー」といわれると、わたしは勝手に、「もちろんっ」と承諾してしまうのだ。どんなに騒がしい休み時間の教室でも、友達の声は、わたしの耳によく響く。折り紙や読書で満足するひともいるかもしれない。たしかに、わたしもそのような時期があったが、一度、外に出て、思いっきりからだを動かし、健康を保つというのも、悪くないのでは、と考えた。

「鬼ごっこするひとーっ。」

今日も友達が呼んでいる。ぜひとも参加しなくちゃな。

「もちろんっ、すぐ行くよっ。」

わたしは、うわばきを下駄箱に突っ込んだ。