授業の渚 nnga-06-4


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ガ 森リンの点数アップ「速く長く書く」

 森リンの得点で、点数全体に大きな影響を与えるのが字数です。
 中身がよければ、字数は短くてもいいという考えももちろんありますが、これまでのデータを見ると、上手な文章を書く人は同時に長い文章も楽に書けるというように、文章の上手さと文章の長さにはある程度の相関関係があることがわかっています。
 では、速く長く書くにはどうしたらいいのでしょうか。そのコツは三つあります。
 第一は、書きなれるということです。文章は、たくさん書けば書くほど、書くことが楽になってきます。たくさん書くためには、日記をつけるのが一番です。現在、ブログなどを作るサービスがいろいろなところで提供されています。ここに毎日自分の考えたことを書くという習慣を作ると、書く練習に大いに役立ちます。
 そんなに書くことがないという人は、読書不足です。文章を書くためには、本を読んでいる必要があります。本を読んでいると、その本に触発されて書きたいことが次々と浮かんできます。本を読まないと、問題意識が刺激されないので、書くことが思い浮かびません。高校生になると、もう「今日はいい天気でした。お母さんと一緒に買物に行きました」などという事実中心の内容は、日記に書く気がしないはずです。自分の意見を書くことが、日記の動機になります。
 書くことがなくなったというのは、読書のインプットが減っているという一つの指標になります。そのことを自覚するためにも、毎日何かを書くということが大事なのです。
 第二は、読みなれるということです。いい文章を書くために、いい文章を読まなければなりません。それも、いろいろな本を読むと同時に、自分の好きな文章を繰り返し読んでいくことが必要です。繰り返し読む本のかわりに、長文を暗唱するのも一つの方法です。
 好きな文章を繰り返し読んでいると、自分の文体もその文章に似てきます。文体が似るぐらいになると、書くことがどんどんスムーズになります。しかし、人間の文体は年齢とともに進歩していきます。ある時期にはある文体で書いていたものが、次第に別の文体に移行していきます。しかし、いずれの場合も、自分が好きになれるような文章を読み、その文章に似た文章を自然に書くようになるという過程が必要です。
 読書の目安は、毎日50ページ以上です。本というものは、毎日読んでいると習慣になって、次々に読みたい本が見つかってきます。逆に、読まない日が何日か続くと、新しい本を読みたいという気持ちがなくなってきます。これは、テレビ番組などでも同じようなことがあるので理解しやすいと思います。テレビで、ある番組を毎週見ていると、どうしても続きを見たくなります。しかし、しばらくその番組を見ないと、新たに見る気がしなくなります。こういう人間の性格を読書にも活用するために、何しろ毎日何かを読むということが必要になってきます。そのためには、いつでも一冊の本を持ち歩くということから始めていきましょう。
 速く書くための第三のコツは、速く書くということです。つまり、速く書こうという心がけだけで、スピードはかなり違ってきます。ゆっくり書いてもいいという気持ちで書けば、文章力は進歩しません。いつでも、より速くより充実した内容を書くように心がけて文章を書きましょう。
 速く書くためには、文章の途中で、「読み直さない」「考え直さない」「書き直さない」という三つの「ない」を守ることが大切です。鉛筆で手書きで書いている人であれば、「消しゴムを使わない」というとわかりやすいと思います。
 文章のテーマが与えられ、最初に全体の構成を考えて簡単にメモをしたら、全体の四分の三ぐらいまでは、ほぼノンストップで書いていきます。途中で、どう書いていいかわからなくなったら、最初に書いたメモを見てまたすぐに書き続けます。消しゴムを使っていいのは、うっかり書き間違えた一文字だけです。二文字以上消すために消しゴムを使いたくなったら、むしろその二文字以上を生かして文章をつなげていきます。
 60分で1200字の文章を書く場合は、最初の30分で、全体の四分の三の800字ぐらいまで書き上げるというスピードで書いていきます。読み直したり、考え直したり、書き直したりしていいのは、最後の四分の一になってからです。特に、最後の五行は、全体の印象を左右するところなのでじっくり書かなければなりません。逆に言うと、最後の五行をじっくり書くために、途中は猛スピードで書いていくということです。
 字数というのは、字数力という、文章力の一つの重要な要素です。いつも600字ぐらいまでしか書けなかった人が、あるとき無理矢理にでも1200字を書くと、そのあと1200字が楽に書けるようになります。
 言葉の森では、とりあえず、60分で1200字を書き上げる力をつけることが目標です。60分で1200字という文章力が土台になって、その先にいろいろな工夫ができてくるのです。まず、字数力をつけることを当面の目標としてがんばっていきましょう。