授業の渚 nnza-06-1


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高3 ザ 6.1週 ●もしも「忘れる」という現象が(感)
 第一段落は、状況実例。私たちは、個が先にあり、そのあとに相互の関係があるという考え方に慣らされている。生物の授業でも、心臓に左右の心房と心室があり、それが肺や体と動脈や静脈でつながれていると習う。しかし、真実は、血管で繋がれている全体が一つのシステムで、個々の臓器は、そのシステムの一つの面に過ぎない。この発想の違いが治療法にも表れる。個々の臓器を見る立場からは、臓器の手術や移植などという治療法が生まれやすいが、全体のシステムを見る立場からは、システム全体の活性化を促す治療法が生まれやすい。
 アメリカの文化は、一人ひとりが自分の意見を言い、そのばらばらの意見を投票で一つにまとめるという仕組みになっている。しかし、日本の文化は、先に全体の合意があることを前提に、一人ひとりがその合意に近づくような形で自分の意見を言う。例えば、数人の人で一つの献立を選ぶ場合、アメリカではそれぞれが「カレー!」「ラーメン!」「カツどん!」などと意見を言い、投票で決める形になる。日本では、「カレーがいいような気がするけど……」「でも、ラーメンも捨てがたいよね……」「意外とカツどんとかもあったりして……」などとぐだぐだ言っているうちに、「じゃあ、カレーにでもしようか」という決まり方になる。
 予測問題の主題は、次のとおり。確かに、全体が先にあるという考え方を見直す必要がある。しかし、その考えが行き過ぎると、日本では特に、個が全体に埋没しやすくなるという新たな問題が生まれることが予想される。
 第二段落は、対策1。日本には全体の合意を優先する文化がもともとあるので、むしろ、できるだけ個人の主張を生かす場を作る必要がある。異論を認める寛容さがあってこそ、全体の合意も生きてくる。体験実例。強制された全体性、例えばマスゲームの演技などはしたいと思わないが、クラスで作ったおそろいのTシャツなどは、すすんで着たいと思う。それは、だれもが自分の意見を言う場を保障されているからだ。
 第三段落は、対策2。個を生かす場を作る方法として、現代のインターネット技術の活用ということも考えられる。現代は、ブログやメールなどだれもが自分の意見を発表する手段を持つようになっている。学校教育にも、これらの技術を生かし、個を生かした全体の運営を目指すべきだ。
 第四段落は、まとめ。確かに、筆者の言うように、全体の関係を先に見ることは重要だ。しかし、日本ではその発想が家族主義的な風土になじみやすいだけに、個の主張を生かすことを忘れてはならない。自作名言。「全体とは、個と独立してあるものではなく、全体もまた個との関係において成り立つものなのである」。