こわい親にならないようにしよう


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書いた人は森川林 on 6月 07, 1997 at 09:41:24:

 子供はもともと明るいものです。ところが、時に、さびしい顔やくらい顔をして教室に来る子がいます。その原因の多くは単純です。お母さんにおこられたとか先生におこられたということです。その理由は、ほとんどが勉強に関してです。
 知識中心の学歴社会が否定されつつあるとはいえ、まだ私たちの意識の中には、勉強の成績で子供を評価してしまう面が強く残っています。確かに、勉強は、子供の生活の中心ですから、成績を軽視してよいわけではありません。しかし、勉強中心の考えがときに、子供に大きなマイナスをもたらしていることも忘れてはならないと思います。
 人生のいちばんの目標は、まず幸福に生きることだと思います。自分を向上させるとか、だれかの役に立つとか、新しいものを創造するとかいうことは、まず自分が幸福に生きていることを前提にして初めて登場してくるものです。
 その、人生に対する幸福感の基礎は子供時代に形成されると私は考えています。子供のときにたっぷり愛情を吸収して、幸福に生きる感覚を育てていなければ、大人になってから幸福に生きる感覚を持つことはやはり困難になると思います。
 ジョン・スチュアート・ミルは、子供時代に父親から英才教育で育てられ、イギリスを代表するような哲学者になりましたが、大人になってから、自分の人生全体に対する漠然とした憂鬱感(ゆううつかん)に苦しめられたそうです。この原因を私は、子供時代からの過度の評価(勉強が進んだらほめる、勉強が遅れたる叱るという親の評価)にあると考えています。
 子供の幸福感を育てるためには、「今、君がここにいることはそれだけでとてもいいことなのだ」というメッセージを何度も子供に伝えることです。つまり、子供の行動を評価するのではなく、子供の存在そのものを肯定し、なんでもない普段の日常生活の中で、明るく楽しく面白く接してあげることです。
 ところが、そういう接し方をしていない家庭は、意外と多いようです。「漫画ばかり見ているからとおこる」「片づけをちゃんとしていないのでおこる」「成績がよかったのでほめる」「勉強をだらだらしているのでおこる」「今度はちゃんとやりだしたので、ほめる」というように、子供の行動に対して、おこるかほめるかのどちらかの接し方が大半を占めています。そして、休みの日などは、いつまでもうちにいるとうるさいから、できれば塾で勉強するか、スポーツで体を鍛えるかして、できるだけうちにいないでほしい、というような考え方になりがちです。つまり、「おこる」か「ほめる」か「無視する」かが、子供に対する接し方の大部分を占めているようなのです。
 子供は、素直です。親が「勉強をして成績がよかったらほめる。それ以外はおこるか無視する」という接し方で接していれば、その期待に応えようとして、一生懸命に勉強します。しかし、この勉強によって、子供は知識を増やすかわりに、人生でいちばん大事な、幸福に生きる感覚を少しずつすり減らしているかもしれないのです。
 大切なのは、勉強以外の時間の接し方です。一見無駄に見えるような日常生活の中に、親と子供の愛情に満ちた交流があれば、勉強のし過ぎも決してマイナスになりません。生きていることが明るく楽しく面白いという感覚を子供が十分に持てないまま勉強をさせてしまうところに、問題があるのです。
 子供に対する接し方の原点は、子供が産まれたときの初心にかえることです。「オギャー」と産声に上げたときに、「よし、この子をたっぷり勉強させて、いい学校に入れて、いい会社に入れて……」と思う親はいないと思います。まず思うことは、「贅沢(ぜいたく)は言わないから、なにしろ普通に育ってくれればそれだけでうれしい」ということだったと思います。
 子供たちは、学校や塾で常に評価にさらされています。それは、社会というものが、業績を評価する仕組みで成り立っているからです。資本主義そのものが、利益を媒介にして、世界のあらゆるものを日々評価する巨大なシステムです。人間が、このような他からの評価を離れて生きることのできるいちばん安心できる場所は家庭です。自分の存在が無条件で認められる家庭でゆっくりエネルギーを充填(じゅうてん)して、子供たちは、明日も元気に学校に行くのです。
 子供をブロイラーか何かのように考えている人はいないと思いますが、勉強にあまり目を奪われると、親は、子供が勉強に役立たないことはなるべくしないで、勉強の時間だけをなるべく多くとってほしいと思うようになります。しかし、一見無駄に見えるような体験や読書が、実は将来の子供の成長に大きく役立ちます。また、おこられながら勉強をしている子は、頭脳の成長が遅れがちです。おこられて不幸な気持ちで勉強するくらいなら、幸福に遊んでいる方が、頭はずっとよくなるのです。目先の成績に左右されずに、大きな目で子供の成長を見ていきましょう。



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