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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   本来の豊かさ   おむふ

 担い茶屋といったものがある。今日の世ではあまり目にせぬものだろう。だが風流なる江戸時代。街道では煎茶を担いだこの茶屋が、「茶はいかがかなー」と朗らかに行きかっていたものだ。呼び止めれば、ほのかな香を纏った茶をせんじてくれる。街道を行くものはその担い茶屋を目にして秋の夜の名月をみるような侘しき心持となる。おや、仕事をしたものであるからのどが渇いた、丁度良かろうとほんのりとした茶を飲む。これがかつての贅沢であった。ましてや朝茶など金銭に余裕のある家でなくては一服などできない。茶を一服する金も無いということではない。それなりに満ち足りた生活をするためには茶にあてる金など一般の町人にはないということである。さらには浮き草暮らで「放浪こそ人生」とする人などは思いのほか多くいた時代だ。ただの朝茶であっても人々にとってはみやびなやんごとなきものであったはずだ。さらに千年ほどさかのぼれば米を食べることすらままならない。朝と夕だけ「あわ」を食べる生活。いにしえの「日の本の国」は今からしては貧しくあった。では今の日本はどうであろうか。あまりに優雅であろう。朝茶など毎朝何杯であろうと飲むことができる。お釜に満ち足りるほどの米。毎日着る服を変えて外に行ける。家には冷蔵庫にある多くの食材。エレキ(電気)による家電製品。もはや100年前の名残はごくわずか。磯の岩にこびりつく苔のようにはかない名残である。豊穣な都が今の日本の有様なのだ。
 ここまでつづってきたように我が日本人の周囲は妙なほどに豊である。ある調査によると小学3年生ほどの子供のお年玉の平均金額は二万四千円であるそうだ。まさに子供までが金色の長者。物質的な豊かさは世の常となった。では精神の豊かさはどうであろうか。果たして本来我々が重んじるべき豊かさとはなんであろうか。それを考えていきたい。
 一つの意見として物質的な豊かさこそ真髄というのがある。否定しかねる意見である
。それなりの金銭を持てるからこそ豊かなる生を織り成すことができるのだ。病をわずらったとて薬などの物質的豊かさによりたいていのものは治るようになった。餓死、凍死を物の豊かさがあればまぬがれられる。生物という根幹自体がもはやこの物の豊かさを求めてきたのではなかろうか。食物、安住、快適さ。いわば生物の王道である。こういったことからしても物質的な豊かさこそ良きものだろう。
 第二に精神の豊かさこそよきものであるという意見がある。どんなに物が豊かであろうとも精神の豊かさがなくては無意味なものである。うわべは豊かそうに見えたとてそれはかりそめに過ぎない。心が潤い豊麗になって初めて豊かといえるのだ。こいうった話がある。ある熱帯魚好きの少年がいた。色とりどりの魚を水槽いっぱいにすることが生涯の悲願であった。だが彼の家はそれほど金銭的に余裕がなくせいぜい飼えるといっても小魚5匹程度であった。それでもその少年はその5匹を細やかに丹念に世話していた。名前までつけていたほどだ。そんな時一人の老紳士と彼は出会った。この紳士もまた無類の熱帯魚好きであった。老紳士の家には100匹近くのきらびやかな魚がいるとのこと。彼はそれらを目にしたい一心で毎日老紳士のもとに通った。はじめのうちはただ眺めているだけであったがそのうち悪心が芽生え、毎日5匹ほど老紳士が目をはなしたすきに盗むようになったのだ。当然彼の水槽は豊満となり虹色の楽園となった。だが彼はかつてのように一匹一匹の魚を愛でることを忘れ全ての魚を結局のところ死なしてしまったのだ。
 今まで二つの意見を提示してみたが私の結論としては精神、物質共に切実なものであるといったものである。そしてなにより我らがなすべきこと。それは本来の豊かさを皆で築き上げることではなかろうか。

   講評   koni


【複数の意見】 相反する意見を挙げ、最後に自分の意見を主張する書き方を勉強中ですが、お手本となるようなすばらしい構成です。

【昔話の実例・長文実例】 お年玉の実例は、全体から見た量的には短い実例ですがとても効果的ですね。データ実例は、このくらいの量で簡潔に説明するのが理想です。精神的な豊かさの実例も道徳的な内容で、親しみやすく万人に分かりやすい内容で、とてもよいです。なんといっても、書き出しの歴史実例がすばらしい。ただ単に昔と今を対比する説明でなく、当時の生活を想像させ現実を直視させる力強い文章です。

【名言の引用】 「いにしえの「日の本の国」は今からしては貧しくあった。」というところは、名言だね。現在の日本を「優雅」と表現したところも真一君らしくていいね。

【総合化の主題】 よくまとめています。自分たちがすべきことまで話を展開させたところがよいです。

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 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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