創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   本当の豊かさ   ハーマイオニー

 現在、日本や日本をとりまく世界の経済状況は大変厳しいと言われている。新聞にも毎日のように「不況」「不景気」「失業」などの文字が躍っている。何しろ未曾有の危機だそうだ。(某前首相のおかげで、誰もが「未曾有」という漢字を正確に読めるようになったのは事実だ)確かに深刻な状況ではあろうが、世界水準から見れば、日本が非常に恵まれた豊かな国であることは間違いない。しかし、豊かさとは経済的、物質的なものだけを指すのではない。本当の豊かさとは、私たちが心から満ち足りて、幸福だと感じられることであろう。
 確かに、物質的に豊かであるのはよいことに違いない。飢えや寒さに苦しまないことは、人間が幸福に暮らすための最初の条件だと言えるであろう。
 私も自分が恵まれた状況にあることは、頭では分かっている。欲しいものは、我慢しなければならない期間があるにせよ、最終的にはほとんど手に入る。しかし、あれが欲しい、これが欲しいと思う気持ちは次々と沸いてくる。実は今も、欲しい本やCDやDVD、洋服やアクセサリーなどがありすぎて、お年玉の使い道を考えては悩んでいる。(笑)物欲とは恐ろしいもので、中途半端に満たされると、さらに増殖していくもののようなのだ。 友人たちに、着ているものや持ち物を褒められるのは快感だ。「カワイイ。それ、どこで買ったの?」という言葉に、私は満足する。そう言われると、自分の物、ひいては自分の価値が認められたような気さえするのだ。物を、それも人に称賛されるような物をたくさん所有するということによって、確かに「豊かさ」を実感できるようである。
 しかし、物が豊かであるだけでは充分とは言えない。いわゆる「心の豊かさ」もまた、人間には必要である。
 昔話に、『かさこじぞう』という話がある。今のようなモノが溢れている時代ではなく、その中でも貧しい老夫婦の話だ。おじいさんは、ある寒い雪の日、お地蔵様に自分が編んだ笠をかぶせてやり、おばあさんもまた、そんな夫を褒め、労う。結局、この善行のおかげで金貨や食物を手に入れることになるのだが、もちろん、そのような見返りを期待しての行為ではない。自分ができるギリギリの範囲で、時にはその範囲を超越していると思えるほど、他者に対する思いやりの心を示せるのは、本当に心が豊かでなければできないことであろう。そんな「豊かさ」を、私たちは科学文明の進んだ社会の中で、どこかに忘れてきてしまっているのかもしれない。
 考えてみれば、私自身も、好きな物に囲まれてさえいればそれで幸せかと言えば、そうではない。やはり、家族がいて、友人がいて、夢があって……、つまり、心の通う人がいること、信じられるものがあってこそ、幸せだと思えるものではないか。
 このように、物の豊かさも心の豊かさも、どちらも大切なものだ。しかしそれらは、何も矛盾するものではないだろう。「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるが、人間らしく生きるには「衣食」も「礼節」も必要だ。また、「衣食」が足りていれば、「礼節」を知るべきだ。私たちは、幸いにして、衣食住に殆ど苦労のないところに生まれてきた。そのような社会を、先祖たちが作ってくれたからだ。それならば、最も大事な課題は、個人が必要な物を所有または共有し、一人ひとりが幸福を実感できる本当に豊かな社会を、自分たち自身の手でこれから作っていくということだ。(総合化の主題)

   講評   nara

 「本当の」と言われたら、その裏に「偽物の・まがい物の」というものがあると考えるべきだね。もし、課題長文でそのような表現があれば、筆者の考える「本当」とは何か、そして、それに対して自分が考える「本当」とは何かを考えていくと、いい感想文が書けそうだ。暉峻 淑子(てるおか いつこ)さんという人が豊かさについてたくさんの本を出しているよ。新書やブックレットなど比較的手に入りやすいので、一度読んでみるといいね。かなり古い著作もあるけれど、今回のテーマの参考になると思うよ。
【構成・題材】第一意見:持ち物(物質的な物)で持ち主の価値が測られる気がするのは、わかる気がするよ。「○○を持っている私」というのがわかりやすい記号となるのだね。内面は触ることも見ることもできない。それをわかりやすく示すのが物質的な物だとしたら、モノは内面を推し量るわかりやすいモノサシ(の一つ)だと言えるわけだ。現代のようにモノがあふれる日本社会においては、「持たない」という状態も往々にして「持てない」と見られがち。だからこそ、持っていることが豊かであるという判断を導くのだね。
 第二意見:物語の引用はきれいにまとまった。12月の清書に使った運動会のエピソードもこの意見の底に絡んでいるように思えるよ。ああいう経験は、お金に換えられるだろうか。お金を出せばできるものだろうか。答えは否だね。物欲には限りがないけれど、思いが満たされるということは確かにあるね。
【表現・主題】「衣食足りて……」のことわざは本来的な意味とともに、いろいろと加工しても使えそうだね。現代日本は「衣食足りても礼節知らず」というところもある。そうなったのはどうしてか、と考えてみるのもおもしろい意見文になりそうだよ。物質というのは数量化できるもの、それは近代工業化が目指した効率化・経済優先と非常に関係が深い。高度成長期を迎え、それを過ぎた現代日本が「本当の豊かさ」を考えなくてはならないのは、目指すべきものが見えなくなっているからかもしれないね。

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