創造と発表の新しい学力
作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)
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風月堂のサーロイン・ステーキ のんちゃん
今年も中学受験の季節がやってきました。バスや電車の中で最後の追い込みでしょうか、進学塾の教材を抱えた受験生と親御さんを見かけます。私は、寒い中、大変だなあ、ご苦労様と思いました。
もう、30年以上も前になります。弟の手を引っ張って、毎日曜日、父は大手進学塾に通いました。教え方を必死に習い、帰ってきてからも弟に必死に教え込みます。まるで、父が受験生のような意気込みでした。
娘の私には怒ったことがほとんどない父でしたが、弟は男の子でしっかりさせなくてはと思ったからでしょうか、飲み込みが悪いと拳骨をくらわせていました。弟はおかげで第一志望に合格しましたが、それは、半ば、父の勲章だったと思います。
時には、勉強が嫌になった弟でしたが、弟の楽しみは、進学塾の後に父にご馳走してもらう風月堂のサーロイン・ステーキでした。それに釣られて、進学塾通いが続いたものでした。
一昨年、父は他界しましたが、その1ヶ月前に、弟は学会が神戸であり、その際に、神戸風月堂のサーロイン・ステーキの写真を撮ってきました。弟は癌で闘病中の父に、
「小学校の時に一緒に、食べた風月堂のサーロイン・ステーキの写真だよ。苦しい時だったけれど、あの味は今でも忘れないよ。おかげで楽しかったよ。」
と、ゆっくり言い聞かせるように言うと
、父は感極まって涙を流しました。私には一寸、羨ましい父と弟だけの共有した時間でした。
弟は医者にはなったのですが、研究の道に入り、開業医の父の後は継ぎませんでした。父の後は弟のお嫁さんが継いでいます。弟は昨年、学会で賞をとり、父の仏前に供えました。父が生きていたら、どんなにか喜んだでしょう。また、「抹消神経障害」のシンポジウムでは、座長を務めるまでになりました。それもこれも、風月堂のサーロイン・ステーキに釣られて、勉強を開始したからこそだと思います。父はしてやったりと、今頃、天空でニヤリと笑っているかもしれませんね。
講評 tama
今回も、優しく語りかけるような文章に引き込まれました。
街で出会う受験生の姿を弟さんの姿に重ね、お父様とともに塾通いをされていたときのことを、懐かしく思い出されたのですね。私には兄がいますが、のんちゃんのお父様と同じく、私の父も男である兄にはとても厳しいと、幼いながらに感じたことを覚えています。
詩集に書かれているお父様の優しい印象とは、やや違っていたところもありますが、やはり男親として、息子に伝えたいと思うことがおありだったのでしょう。父と息子、そして男同士の絆を見たような気がします。何だか羨ましいですね。
それにしても、「サーロイン・ステーキ」とは、いかにも育ち盛りの男の子とお父様らしいです。これが母親と娘なら、ステーキがケーキやパフェになるのかもしれない、などと想像してしまいました。
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