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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   蛍の教え   おむふ

 水とは香りのするものである。太古からの長寿の森。そのかたすみにある水田からはなんともいえぬ水の薫りがするものだ。濃厚でありながらどこか甘く淡いものも思わせる。そうした奥深き夏の夜。蛍はこの水田へとほのかに現れ出るのだ。黄金色に火照る山の使いとでもいおうか。豊麗なる水田のほとりでのことだ。随分と前に目にした光景である。それを目にしているとほろ酔いしたかのような心持ちとなる。まやかしを見ているようなあまりに優美なものともいえよう。灯明や名月とはまた違った風流なるものである。えもいわれぬ山と水の香を感じ、このあでやかな蛍火を目にする。これは日本だけにある独特の文化であろう。私はつい先日までそう思っていた。私が父の郷里で目にした蛍は平家ボタルであったそうだ。平家一門とは古来の日本で栄えた武士の一族である。壇ノ浦にてその栄華もついには終末の時をむかえたというのはいわずとしれた話だろう。それゆえこの平家ボタルとはどこかつつましく悲哀がにじんでいるのか。日本の一門の名がつくような蛍であるから日本だけに生息する蛍だろう。私は今までそう思って止まなかった。だがこれはやんごとなき誤解である。平家ボタルは中国や朝鮮半島にも生息する蛍なのだ。自分が感じたものは日本でしか見られぬものだ。そういったあまりに狭い視野で私はものを考えてしまったようだ。これと似たような思い込みの例として日米の相互理解の食い違いといったものがあるそうだ。日本人の多くは日本の文化は外国人に理解されないだろうという誤解である。刺身の味が分かるのは日本人だけ、初秋の夜の月をみやびなものとしてみるのは日本人だけだ、といったようなものだ。その逆に欧米では自分達の考えはだれもが理解できるはずだというものがある。英語はだれもが必ず理解できるはずだといったようなものである。相互理解の問題とはこうした国際的な問題とまでなっているのだ。この相互理解について考えるのには大いなる意義があるだろう。ということで思い込みや相互理解について検証していきたいと思う。
 さて、ではこの思い込みとは果たして良きものか悪しきものかそれを考えていきたい。だが「思い込み」と述べてしまってはどうも悪しきものと思われてしまってならない。(これも視野が狭いことからくるものだろうか)それゆえここからは「自分の考えこそ全てとは思わず広き視野を持つことこそ人生の奥義である。」もしくは「他人にわずらわされることなく自分の考えで心を彩り織り成してゆく。そうすれば自分がより風格のあるものとなる」いう考えから二者択一してゆきたいと思う。
 まずは思い込みや視野の狭さを否定してゆく意見からである。視野の狭さや自分達の文化に関する思い込みは歴史上でもあらゆる点で風雲を巻き起こしている。自分の民族文化が他の民族が理解されないことによる戦。自分達のもつ技術がなによりいう思い込みによる誤った医療。病、飢え、行き倒れ。まさに相互理解の浅さゆえに人は飽きることなく自ら乱世をつくりだしてきた。社会的にも現代は国際的かつ多様的なものの見方が必要とされているだろう。自分のもつ流派のみにすがり狭くものを見ていてはなにひとつ見出せるものがなかろう。
 だが己の思う道を行くのもなによりという意見にも正当な理由がある。大衆の意見こそが全てではないというのは私が常々思ってきたことでもある。革命とされるものはある種の思い込みにより編み出されてきたといってもよかろう。トーマス・エジソンが電球に竹を用いたこと、ジョージガモフの火の玉宇宙論、青色発光ダイオードの画期的発明。世間に否定されてきたことが実は正しきことであったというのはよくみられることだ。また考古学者にもこれはいえる。伝説とは正史ではない。だがこの伝説が語り継がれてきたもとにはなにかしらの真実から生まれ出たものだ。幻の帝国、伝説の都、それをもとにバカにされながらも驚天動地の発見をしたという人がいる。例を挙げていてはそれこそきりがない。
 今までこの二つの意見について論じていたがどうも二者択一をしがたい状況に私はある。どちらにせよ苦い味でもあり甘く豊満な汁が中にある。内に目を向けるべきか外に目を向けるべきか。それを論ずるよりまず悲しみを生んではならないという前提をしっかりと立てていかねばならないだろう。社会の弾圧、自我の異常な確立。まずはどちらを選ぶかという前にこれらを正してゆかねばなるまい。

   講評   koni

【複数の意見・構成図】 「思い込み」の是非について考えた、そこから、意見化するのが難しい課題でしたが、さすがです。そのことを1つの段落で説明し、複数の意見を挙げることができました。【昔話の実例・長文実例】 平家ボタルの例は、非常に興味深い内容ですね。一般的によく知られているゲンジボタルではなく、平家ボタルを挙げたところが上手い。意見の後の実例は、具体例をあげて説明することができました。くどい説明がなく、単純に「誤った医療。病、飢え、行き倒れ」などと言葉を並べているだけですが、そこに読者を納得させる力強さがあります。【名言の引用】 よくできています。【総合化の主題】 「思い込み」と「相互理解」の言葉をまとめに1回ずついれてもいいかも。最後は、大きく捉えて意見をさらに深めることができました。

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