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　　　医務用品の利害点　　　まかじろう

　僕の記念日は，何とも言えない苦い思い出だ。名付けて「頭の怪我記念日」だ。
　この苦い思い出は，二〇〇八年十一月六日，学校の一泊二日の宿泊学習の際に発生した事件だ。鹿児島市少年自然の家でやってしまった。事件現場は二段ベッドの下の方。お風呂から上がってから，二段ベッドの下でライダーキックをした。その時，頭を木製の骨組みに打ち付けたかかすったかは今となっては分からない。そこまでで終わるならまだしも，そこからあとが事件となってしまった要因だ。なんと，打った部分から血が流れ出したのだ。頭には毛細血管が縦横無尽に駆け巡っているのだから，血が絶え間なく流れ出るのは仕方がない。慌てて僕は，トイレに走り込んで泣いているところを発見された。鹿児島市の大きな病院に搬送された。もちろん，たったこれだけのことだから，救急車が駆けつけるほどの大騒ぎではない。治療まで行った。しかし，その際，開いた口がふさがらないような光景を目の当たりにしてしまった。僕をまるで人間と見なさず，紙と見なすようなものを取り出したので，魂が肉体から出て行きそうな感じがした。「紙」という表現が出てきたので，事務的なものだろうとだいたい想像がつくのではないだろうか。そう，ホッチキスだ。衛生上大丈夫なのか，という疑問が出てくるが，その条件はクリアしている。どうしてかというと，「事」務用ではなく，「医」務用だからだ。そして，それを傷口をふさぐようにしてから，ガシッ，ガシッ，ガシッ。三回も縫った。僕の憶測では，このホッチキスの方が良かったと思う。三針縫うと仮定しておこう。その場合，一回傷口に通し，そこで結び，という作業を三回繰り返す。針も細く，痛みも最小限に抑えられる。しかし，この場合だと，糸を抜く時に激痛にならないのか，という疑問が残ってしまう。それに比べて，ホッチキスは，刺す時と抜く時の痛みに耐えることさえできれば，あとは保証してあげよう。どうしてかというと，強固にしてあり，抜こうにも抜けないし，それによって復活するのが，早くなるからである。
　こういう面からすると，怪我しても良いと思うかもしれないが，悲劇は襲ってくるのだ。まずは一つ目。頭の表面が凸凹になるという点だ。それもそのはず，傷口をふさぐようにして新しい皮膚が出現してくるから当然のことだ。二つ目は，若い僕には分かりづらいが，その部分には髪の毛一本として生えてこないという点だ。ホッチキスでとめると，ふさぐような形になるので，毛根が植え込んである部分が抹消される形となる。そのため，毛根知らずの頭皮のおかげで禿げ上がるのだ。
　僕は，これらの事例をふまえて，やっぱり健康で無難な人生が一番良いことが分かった。言い忘れていたが，禿げる状態がお気に召さないのであれば，育毛剤を使用することをお勧めする。ちなみに，去年も宿泊学習があった。二泊三日で一昨年よりリスクが高くなったが，同じ轍を踏まずに，二段ベッドの上で怪我なく過ごすことができた。

　　　講評　　　arare