| ユートピアに飽きる人間の為の社会 |
| イチゴ | の | 空 | の広場 |
| あやの | / | あしわ | 高3 |
| 人間は本質的に「ユートピア」にさえ飽きる存在であるにも関わらず、私た |
| ちはユートピアが固定的に存在する物だと思い込んで探し求めている。安全で |
| あれば、お金が有れば、安定した生活が有れば、私たちは幸せになれると勘違 |
| いしているのではないか。しかし実際は、安全だけが保障されても、お金だけ |
| あまるほど有っても、一定の生活水準が保たれていても、それだけで私たちは |
| 満足して、幸福だとは言えない。人間の寿命が今世紀間に飛躍的な伸びを見せ |
| 、我が国は現在平均寿命が男77年、女84年と世界で最も長く、最長寿国といわ |
| れている。ここまで人生が長くなったことで私たちは「老後の生活」という問 |
| 題を抱えるようになり、高齢化が進む日本では今、退職後の余生をどのように |
| 過ごすべきかという問題に、個人的にも、行政の間でも議論が集中ている。介 |
| 護保険制度も今春から開始され、私たちは必然的に自らが年老いた時のことを |
| 考慮して「第二の人生」用の計画を立て、その計画が達成させられるような生 |
| 活を送らねばならなくなった。 |
| つまり私たちはある程度設計された人生を歩むことになるのだ。計画の立て |
| られる人生こそ安定した平和な社会の象徴だと戦争経験者らは言うかもしれな |
| い。確かに、「未来の見通しが付く社会」は「平和」であるのだろうが、私た |
| ちは次の段階として活力のある、動きに満ちた平和を求めているのだ。既に、 |
| 戦争を知らない世代はこののっぺりとした単調な平和に飽きてきている。就職 |
| せずアルバイトで生計を立てる「フリーター」や果てには成人後も職を持たず |
| 親を頼って寄生する「パラサイト」等と呼ばれる人々が急増している背景にも |
| 、この「のっぺりとした単調な平和」の刺激の弱さが影響しているのではない |
| か。今の若い世代の例や、前述にもあるように人間は「ユートピアにさえ飽き |
| る」のに、計画済みの、設定された、安全な暮らしになじむことができるのか |
| 。 |
| 理想としては、人的エネルギーが常に循環し、良い意味での競争もあり、安 |
| 全性も兼ね備えつつ、全体として恒久的な平和に向かって進歩し続ける社会こ |
| そ、私たちが今求める社会像なのだ。そのような理想的社会を実現させるため |
| にはまず国民の「平和」の概念を一歩前進させ、理想像をを明確にした上で、 |
| 膨大なエネルギーと創造力、民衆の心理を理解した行政が必要となる。人間は |
| 享楽だけでも、禁欲だけでも飽きてしまうのだから、それら双方を含みつつ常 |
| に動きのある、挑戦的な社会が必要だ。 |
| しかし、「人は常に新たな問題を持ち出すのだから現状のままでよい」、「 |
| 理想の社会など創れるわけがない」、「ユートピア=天国だ」等と「理想社会 |
| 」を創造するに当たっての意見は賛否両論分かれるところだろう。だが現状の |
| 社会に全ての人が満足していない以上、私たちはより理想に近づくために日々 |
| 挑戦し続け、少しでも進歩するように努力するべきである。この日々の挑戦に |
| こそ我々はエネルギーを注ぎ、社会の活性化に役立てるべきではないか。 |
| ローマは一日にして成らず、というように私たちが求める理想社会も容易く |
| 手にはいるような物ではないのは既知のことだろう。しかし、今ここで簡単に |
| あきらめてしまうのではなく、ほんの些細なことからでも「理想社会」に近づ |
| くための道を切り開いて行くことが我々の使命ではないか。 |