| 距離をとるということ |
| アジサイ | の | 空 | の広場 |
| 山下 | / | かけ | 学 |
| 家の近くに駅まで続く川沿いの道があり、そこから見えるいろいろな景色を |
| じっくり眺めるのが好きだ。今の時期だとまだ川にはカモやシギがいて、特に |
| 彼らの動きについ見入ってしまう。しかし駅が近くなるとその楽しみも味わえ |
| なくなる。駅周辺にはカモがたくさんいるのと同じようにハトやカラスもたく |
| さんいて、飛びまわっているからだ。ハトは目の前を飛び、カラスは低い木に |
| 止まってフンを落とすのではないかとひやひやする。ハトやカラスに限らず、 |
| 数がそれほど多くなくて人に危害を与えるようなことがなければかわいがられ |
| る生き物も、数の度を越して人間の生活に支障をきたすとやっかいな存在にな |
| る。適した距離を置くことが必要だ。 |
| それは人間関係においても言えることである。家族であれ友達であれ恋人同 |
| 士であれ、不安になるからといって絶えず一緒にいて、全てを知りたいという |
| 気持ちでいたら、踏み込んではいけない領域にも気づかず、いつしか相手との |
| 距離を保てなくなる。相手の負担になる。一緒に生きていくというのは願望を |
| 押し付けるのではなく、ちょうどいい距離を保ちながら相手のことをどのくら |
| い思いやることができるかにかかっている。そのバランスを崩したらなかなか |
| うまくいかない。 |
| たしかに自分の思いのままにしたい、何でも知りたいという気持ちは個人差 |
| はあれ、誰もが思うものかもしれない。相手が人間であったらその気持ちを反 |
| 省したりすることもあるだろう。しかし相手が自然や動物の場合はどうだろう |
| か。ハトやカラスがやっかい者になったのももとはと言えば人間の責任である |
| 。人間が彼らとの距離を考えず、ずかずかと入り込んでしまった。だからハト |
| が目の前を飛んでも、カラスがフンを落としそうになっても怒る資格は、ない |
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