ヒイラギ の山 7 月 1 週 (5)
世界一のカレー   池新  
【1】「いただきます。」
 私は、世界の食べ物の中でカレーがいちばん好きだ。カレーだと、必ずおかわりをしなくては気が済まない。カレーのどこが好きなのかと聞かれてもおいしいものはおいしいのだから理由などない。
 この前、学校の林間学校で、飯盒炊さんをしてカレーライスを作ることになった。【2】まず、学校の授業で、カレーに使われる材料や、カレールーの歴史などについて調べ、発表をした。そこで、カレーの材料にはいろいろな人が関わっていること、また、長い歴史があることが分かった。そして、自分の家で、一人でカレーライスを作ることが夏休みの宿題の一つとなった。
 【3】カレーが大好きな私でも、生まれてから一度もカレーを自分で作ったことはなかった。母に教えてもらいながらやっとのことで作り上げたが、その時、こんなに大変なのに林間学校で自分たちだけで作れるのかと不安になった。
 【4】その不安を抱えたまま、林間学校が始まり、二日目の夜に飯盒炊さんが行われた。もし、作ることができなかったら、私たちのその日の夜ご飯はなしになってしまう。私は薪(まき)の係りだった。お米を研ぎ、野菜を全て切り終わった後に火をつけた。【5】その火はまるで、紅葉したモミジのように真っ赤だった。途中で、火が消えそうになって慌てたが、以前、火を作る練習をした時、火が消えそうになったらうちわであおげばよいと習ったのを思い出した。みんなで、一生懸命うちわであおぐと、消えかけていた火が勢いを盛り返した。【6】しばらくすると、飯盒から、水滴がたれてきた。薪(まき)でさわってみると、ぐつぐついっている振動が手にも響いてくる。
「やったあ。」
なぜみんなが喜んでいるのかというと、そうなったらご飯が炊けたという合図だからだ。【7】本当にできているか確かめるために、火から下ろし、軍手をした手で飯盒のふたを開けてみた。すると、真珠∵のような真っ白なご飯が姿を現した。そのご飯を見たとき、私はとにかくうれしかった。
 ご飯は、飯盒ごと逆さにして蒸しておき、私たちはカレーの鍋の方に取り組んだ。【8】しかし、このあと、私たちは小さな失敗をしてしまった。水を多く入れ過ぎてしまったのだ。鍋の中はびちゃびちゃになっていたが、私たちはあまり気にすることなく作業を続けた。そして、やっとカレーの方も完成した。
【9】「いただきます。」
と声をそろえ、一斉に食べ始めた。私は水が多すぎて、おいしくないカレーになっていないかと思っていたが、その心配は無用だった。なぜなら、家のカレーよりもおいしかったからだ。私は、もちろん、それをおかわりした。
 【0】この飯盒炊さん以来、私はもっとカレーが好きになった。母が、今日の夕飯もカレーだと言っていたので、とても楽しみだ。

(言葉の森長文作成委員会 Λ)