キンモクセイ の山 8 月 3 週 (5)
○「おや、かわいそうに。」(感)
絵
池
池新
渚
波
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【1】「おや、かわいそうに。」
ある朝のこと。なんのきなしに、りょうかんさまがゆかの下を見ると、たけのこがあたまをだしています。【2】たけのこは、ゆかにあたまがとどいて、もうのびることができないでいます。
【3】「きのどくなことじゃ。まてまて。」
りょうかんさまはかなづちをもってくると、めりめりめりと、ゆかいたをはがしてしまいました。
【4】「たけのこさんや、もう、だいじょうぶだ。さあ、のびておくれ。」
【5】りょうかんさまはそういってうれしそうなかおをしました。
【6】十日ばかりたちました。たけのこはぐんぐんのびて、こんどはやねにつかえました。【7】するとりょうかんさまは、やねのむぎわらをぬいて、やねにあなをあけ、そこからたけのこをだしてやりました。
【8】うちの中にはえた、たけのこのそばにすわって、りょうかんさまはにこにこしながら、ながめていました。
【9】「あっ、これはまあ。」
りょうかんさまのうちのまえをとおりかかった、村のおひゃくしょうさんはこれを見て、あいた口がふさがりませんでした。【0】
(宮脇 紀雄著 「偉人の話」より)