ミズキ2 の山 9 月 3 週 (5)
★自然のなかにはいりこみ(感)
絵
池
池新
渚
波
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【1】自然のなかにはいりこみ、自然の精密さとか、自然の大きないのちとかにふれ、自然と心を通い合わせたり、自然から学んだりしたとき、人間は自分がいかに微小であったかに気づく。【2】微小であるのに努力もしないで不遜になっていたことに気づき、恥ずかしくなったり、つつましくなったりする。
【3】そればかりではない。自然の持っている、生まれいずるいのちにふれることによって、平凡なくりかえしだけをしていた日常の生活からときはなたれ、力を与えられたり、充足したゆたかな気持ちになったりするのである。【4】仕事に疲れはてたり、気持ちがあらあらしくなったり、自信をなくしてしまったりした人も、自然からいのちを与えられて、いのちをよみがえらせ、自信をとりもどしたり、暖かい気持ちになったりすることもできるのである。
【5】よくみればなづな花咲く垣根かな
これは芭蕉の俳句だが、いままで何もないと思った垣根の下になずなの花が白々とつつましく咲いているのを発見して驚いている。【6】ほんとうによく見れば、どこにでも真実なものはあり、美しいものはある。こういう発見をし、驚きをつぎつぎとしていくことによって、人間は、たえず自分をあたらしくし、新鮮にしていくことができるのである。
【7】そうして、そういう人間は人間をみる場合も、形式的にみたり、常識的にみたり、一般的にみたりしなくなる。いままで何もないと思った人のなかに美しいものをみたり、暖かいものをみつけ出したりするようになる。【8】そしてそういうところから、ほかの人間をたいせつにしたり、ほかの人間と、しみじみと心を通い合わせたりすることもできるようになっていく。【9】そういうことからまた、自分自身をゆたかに成長させることができるようになっていく。
だから自然のなかにはいりこみ、自然と心を通い合わせ、自然から学ぶということは、人間性を回復するということでもある。【0】
(斎藤喜博『君の可能性』による)