レンギョウ2 の山 1 月 3 週 (5)
★(感)内部からくさる桃
絵
池
池新
渚
波
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内部からくさる桃
【1】単調なくらしに耐えること
雨だれのように単調な……
【2】恋人どうしのキスを
こころして成熟させること
一生を賭けても食べ飽きない
おいしい南の果物のように
【3】禿鷹の闘争心を見えないものに挑むこと
つねにつねにしりもちをつきながら
【4】ひとびとは
怒りの火薬をしめらせてはならない
まことに自己の名において立つ日のために
【5】ひとびとは盗まなければならない
恒星と恒星の間に光る友情の秘伝を
【6】ひとびとは探索しなければならない
山師のように 執拗に
「埋没されてあるもの」を
ひとりにだけふさわしく用意された
「生の意味」を
【7】それらはたぶん
おそろしいものを含んでいるだろう
酩酊の銃を取るよりはるかに!
∵
【8】耐えきれず人は攫む
贋金をつかむように
むなしく流通するものを攫む
内部からいつもくさってくる桃 平和
【9】日々に失格し
日々に脱落する悪たれによって
世界は
壊滅の夢にさらされてやまない【0】
(『茨木のり子詩集』より)