サツキ2 の山 5 月 1 週
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○自由な題名
○家族で遊んだこと
★お手伝い、星空を見たこと

○蟹のしょうばい(感)
蟹のしょうばい

 【1】蟹がいろいろ考えたあげく、とこやをはじめました。蟹の考えとしてはおおできでありました。
 ところで、蟹は、
「とこやというしょうばいは、たいへんひまなものだな。」
と思いました。と申しますのは、ひとりもお客さんがこないからであります。
 【2】そこで、蟹のとこやさんは、はさみをもって海っぱたにやっていきました。そこにはたこがひるねをしていました。
「もしもし、たこさん。」
と蟹はよびかけました。
 たこはめをさまして、
「なんだ。」
といいました。
【3】「とこやですが、ごようはありませんか。」
「よくごらんよ。わたしの頭に毛があるかどうか。」
 蟹はたこの頭をよくみました。なるほど毛はひとすじもなく、つるんこでありました。いくら蟹がじょうずなとこやでも、毛のない頭をかることはできません。
 【4】蟹は、そこで、山へやっていきました。山にはたぬきがひるねをしていました。
「もしもし、たぬきさん。」
 たぬきはめをさまして、
「なんだ。」
といいました。
「とこやですがごようはありませんか。」
 【5】たぬきは、いたずらがすきなけものですから、よくないことを考えました。
「よろしい、かってもらおう。ところで、ひとつやくそくしてくれなきゃいけない。というのは、わたしのあとで、わたしのお父さんの毛もかってもらいたいのさ。」
「へい、おやすいことです。」
 【6】そこで、蟹のうでをふるうときがきました。
 ちょっきん、ちょっきん、ちょっきん。∵
 ところが、蟹というものは、あまり大きなものではありません。蟹とくらべたら、たぬきはとんでもなく大きなものであります。【7】その上、たぬきというものは、からだじゅうが毛むくじゃらであります。ですから、仕事はなかなかはかどりません。蟹は口から泡をふいていっしょうけんめいはさみをつかいました。そして三日かかって、やっとのこと仕事はおわりました。
【8】「じゃ、やくそくだから、わたしのお父さんの毛もかってくれたまえ。」
「お父さんというのは、どのくらい大きなかたですか。」
「あの山くらいあるかね。」
 蟹はめんくらいました。そんなに大きくては、とてもじぶんひとりでは、まにあわぬと思いました。
 【9】そこで蟹は、じぶんの子どもたちをみなとこやにしました。子どもばかりか、まごもひこも、うまれてくる蟹はみなとこやにしました。
 それでわたくしたちが道ばたにみうける、ほんに小さな蟹でさえも、ちゃんとはさみをもっています。【0】

「新美南吉童話作品集」