ススキ の山 12 月 1 週
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○自由な題名
◎おいしかったことやまずかったこと
★ないしょの話、なにかをかんさつしたこと

うすいピンクの桜貝
 【1】私が小さい頃から大切にしているものは貝殻です。大切にしているだけではなくて、今も集めているので、大切にしているものはどんどん増えていきます。
 最初に貝殻をもらったのは、たぶん幼稚園の年中のときです。【2】伊豆にあるお父さんの会社の保養所(ほようじょ)でお泊まりをしたときです。きれいな伊豆の海には広い砂浜があって、私は、そこでよく砂の山を作って遊びました。砂の山を固めたあと、真ん中を掘ってトンネルにするのが大好きでした。
 【3】私は、浮輪をしても波が怖かったので、あまり海には入らないで砂遊びばかりしていました。砂を掘っていたら、小さい貝や貝のかけらがたくさんみつかりました。私はそれを洗ったアイスのカップに集めました。
 【4】そのときも私が砂を掘っていたら、赤い水着を着たお姉さんがやって来て、
「たくさん集めたね。これきれいでしょう。桜貝というのよ。」
と、ピンクの二枚貝をくれました。すけて見えそうなうすい貝で、まるで貝のお姫様のようでした。【5】私はうれしくて、ありがとうと言いたかったけれどはずかしくて言えませんでした。代わりに横にいたお父さんがお礼を言いました。
 夕ごはんのとき、お母さんにそのことを話しながら桜貝を見せました。【6】お母さんは、
「あら、ほんと。こんなにきれいな桜貝ってあんまりないのよねえ。よかったわね。」
と言って、そっと桜貝を手に乗せました。そして、
「これねえ、うすくてわれやすいから、何かでつつんでおいた方がいいね。」
と、ティッシュを出して、そっとつつんでくれました。∵
 【7】私は、ちょっと緊張しながら、何度もそのティッシュをあけて、桜貝を見ました。寝るまでに三十回ぐらいは見たと思います。ほんとうにきれいで、何回見てもあきませんでした。その夜は、うれしくてなかなか眠れませんでした。
 【8】大事に持って帰った桜貝ですが、いつだったかティッシュから出して、他(ほか)の貝といっしょにテーブルに並べて遊んでいるとき、つまみあげた指先にちょっと力が入りすぎて、片方のはしが欠けてしまいました。
 【9】その後、自分で海で拾ったり、誰かにおみやげでもらったり、鎌倉のお店で買ったりして、貝殻はどんどん増えていきました。でも、やっぱりいちばん大切にしているのは、はしが少し欠けたあの桜貝です。私は、今も時々、桜貝の入った宝石箱を開けて見ています。【0】

(言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会 φ)