テイカカズラ の山 3 月 2 週
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○自由な題名
○種まき
★給食、春を見つけた

○化学繊維(かがくせんい)が発達(感)
 【1】化学繊維が発達し、最近では、手間のかかる養蚕をする人が少なくなりました。けれど、カイコを飼っているところを見たことがある人、あるいは自分で飼ったことがある人なら、だれでも知っていることですが、【2】平らな入れ物の中にクワの葉を入れ、そのままにしておいても逃げだしもせず、あちこち歩きまわりもせず、ただクワさえきらさなければ、かんたんに飼えます。
 【3】ほかの昆虫を飼う時には、逃げないようにカゴやふたのある入れ物に入れ、えさや水やと、けっこう苦労するものです。カイコはその心配がありません。やがて完全に成熟すると、入れ物のすみや、枯れたクワの葉のあいだに糸をはり、繭をつくります。【4】養蚕家が、この時に入れ物の上に繭をつくる格子状のワクを置いてやると、ここにはい上がって、一匹(ぴき)が一つずつきれいに繭をつくります。卵からふ化した幼虫が、繭になるまでだいたい一か月で、そのあいだに四回、脱皮をして成長し、繭の中でサナギになります。
 【5】養蚕業では、繭ができるとすぐに集め、大きさのそろったものを選んで糸をとる工場に送ります。サナギが成虫のカイコガになるのは一週間ほどですから、ガにならないうちに糸をとりはじめます。【6】これは、繭を煮ながら糸をやわらかくして、ほぐれた糸をまき取る方法が一般的です。これで、一つの繭から切れずにつながった糸がとれます。現在の大きな良い繭は、千五百メートルほどの糸になります。この糸をより合わせ、絹糸にして布に織ります。
 【7】このように繭から一本のつながった糸をとるのですから、繭の中で羽化したガが、繭を破って外にでたのではなんにもなりません。ヒトが糸をとるためには、成虫になってはいけないので、どんなにたくさんカイコが飼われても、すべて殺されてしまうことになります。
 【8】つぎの卵を産ませる分は、別に何匹(びき)かのこしておけば、この∵ガ一匹(ぴき)で千個近い卵を産みますからいっこうにさしつかえありません。幼虫の生活も、子孫をつくることも、すべてヒトの計画どおりになっています。
 【9】そのうえ、羽化したガは翅を持っていますが、飛ぶことはできません。この翅のはばたきはもともと飛んでいたころのはばたきと同じですから、いつごろからか飛べないガになってしまったのです。これも、たぶん、飼育化の結果でしょう。【0】すべての点が、ヒトが飼いやすい、すなわち管理しやすいようになっているのです。
 こんな野生の昆虫が、はじめからいるわけがありません。その証拠に、今日ではカイコの祖先型と考えられている野生のカイコ、これはクワの樹につくのでクワコとよばれますが、これは、成虫は立派に飛びますし、幼虫は群がることもなく、一匹(ぴき)ずつかくれるように生活しています。飼育もむずかしく、とてもカイコのようには飼えませんし、注意しないとすぐ逃げだしてしまいます。

 (「いい虫わるい虫」奥井一満() 日本少年文庫より)