チカラシバ の山 8 月 2 週
◆▲をクリックすると長文だけを表示します。ルビ付き表示

★自由な題名
○何かを作ったこと
★つまみ食い、よその家にとまったこと
○みずでっぽうで遊んだこと
○むかし、からからにかわいた砂漠で、
 むかし、からからにかわいた砂漠で、ある男が、十頭のラクダを水飲み場につれていこうとしていました。
 しばらくあるいたところで、男は一頭のラクダの背にのり、あとなん頭いるか、かぞえてみました。ラクダは九頭しかいませんでした。男はあわててラクダの背からおりると、いなくなった一頭をさがしに、いまきた道をてくてくあるいてもどりました。
 けれども、どこにも姿が見えません。きっといなくなってしまったんだ。男は、そう思ってさがすのをやめ、大急ぎでラクダたちのところへもどりました。
 がっかりして、もどってきてみると、これは、またどうしたことでしょう。ラクダはちゃんと十頭いるではありませんか。大よろこびで、男は、そのうちの一頭の背なかにのりました。
 ところが、しばらくすると、もういちど、数をかぞえてみたくなりました。九頭しかいない!男は、とほうにくれて、ラクダの背からおりると、またいなくなった一頭をさがしにいきました。どこにもいません。
 男は、群れのところにとんでかえって、数をかぞえてみました。すると、おどろいたことに、十頭ぜんぶそこにいて、ぶらぶらあたりをあるきまわっています。
 男は、これは砂漠の暑さのせいだと、もんくをいいながら、こんどは、いちばんうしろのラクダにのりました。そして、三度めの正直とばかりに、もういちど、のこりのラクダをかぞえました。さっぱりわけがわからない。また一頭たりなくなっている! 男は、悪魔をののしりながら、ラクダからとびおりました。そして、のろのろと群れのあいだをあるきながら、一頭ずつかぞえていきました。ちゃあんと十頭います。
「わかったよ、わかったよ、この根性まがりの悪魔め。」
と、男は吐きすてるようにいいました。
「のって一頭をなくすくらいなら、十頭つれてあるくほうがましさ!」

(ユネスコ文化センター編「アジアの笑いばなし」)

 国家試験を目前にひかえた三人の受験生が、結果をうらなってもらいに、ある占師のところへいきました。
 すると、占師は、なにもいわず、ただだまって指を一本立ててみせました。
 結果が発表されてみると、三人のうちひとりだけが合格しており、おかげで、この占師の評判はぐんとあがりました。
 占師のわかい弟子は、どうしてそれがわかったのか知りたがりました。
「成功の秘訣は、ものをいわぬことじゃ。」
と、占師はいいました。そして、それをきいた弟子がぽかんとしているのを見て、こうつけくわえました。
「いいかね、おまえは、わしが指を一本だしたのを見ておったろう。それは、三人のうちひとりだけが合格するという意味にも取れる。事実、そうなった。だが、もし、ふたり合格しておったとしても、わしの見立ては、やっぱりただしい。指一本は、ひとりおちるという意味にとれるからな。三人ともとおっていたとしても、指一本は、三人そろっていちどに合格という意味にとれる。その反対もおなじこと。どんなばあいも、わしはただしいんじゃ。」

(ユネスコ文化センター編「アジアの笑いばなし」)