ウツギ の山 10 月 4 週 (5)
○大きな赤いハサミを   池新  
 大きな赤いハサミを持ったアメリカザリガニは、子供たちに人気があります。このアメリカザリガニは、名前のとおり元々はアメリカで暮らす生き物でした。昭和の初めごろ、食用ガエルだったウシガエルの餌にするために、わざわざ海の向こうのアメリカから買われてきたのです。
「ウシガエルに食べられるなんてまっぴらだ。」
きっとそんな考えをもったアメリカザリガニたちがいたのでしょう。カエルに食べられるぐらいならもう帰るとばかりに、近くの川や池に逃げ出し、そこで子供を生み、あっという間に日本中(じゅう)に広がりました。それだけ生きる力が強い生き物だったのです。それもそのはず、アメリカザリガニはなんでもムシャムシャと食べてしまうし、少しくらい汚れた水の中でもへっちゃらなのです。もし、アメリカザリガニがグルメできれい好きだったら、今ごろ日本には生息していなかったかもしれません。
 さて、立派なハサミを持つアメリカザリガニは、他の生き物はもちろん、仲間同士でもよくケンカをします。そんな時に足やハサミが取れてしまうことがあります。さあ、大変です。でも、心配はいりません。何度か脱皮をしていくうちに足やハサミは元のように戻ってしまいます。まるでしっぽを切られたトカゲのようです。
 エビやカニの仲間には、このように優れた再生能力を持つものがあります。もちろん人間にも、ちょっとした怪我なら元のように直してしまう力が備わっています。
 アメリカザリガニは、仲間同士でもケンカをしてしまいますから、たくさんつかまえたときは、全部うちに持って帰らずに、川へ返してあげましょう。

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(ω)