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ああとか(ああとか)広小の広中2024年03月清書
量と制御のバランス
ああとか

 自然に対する人間の働きかけには二つの型がある。一つは量についてのもの。もう一つは制御と管理に関するものである。昔から人はいつでも量の不足に悩んできた。技術革新は自然から多くの便益を引き出し、量の問題の解決に大きな役割を果たした。しかし、技術革新の代表例である核兵器によって量や効率の課題が飛躍的に解決されたと同時に、その量を制御するものが不足していることが見えてきた。昔から人々が抱えてきた問題には量と制御ないし管理の二面があったのである。いまだに量を中心に考えている社会は問題だと思う。
 その第一の原因は、欧米に追いつけ追い越せという時代が長かったことだ。日本と比べて欧米のものは大きさも量も倍である。例えば、食事だ。近年、日本を含め多くの国の食事が欧米化している。しかし、日本人は昔から消化しやすいものを主食としており、それに沿った内臓の働きを持っているため、消化の悪い小麦製品や動物性食品は日本人のからだにあまり適していない。そもそも欧米人と日本人では体の作りが違うのにも関わらず、「欧米化」を重視しすぎて、それが形だけのものになりかけているのだ。このように、欧米に追いつけ追い越せという姿勢が全てにおいて日本の発展につながるとは限らないのだ。
 第二の原因は、社会全体に、まだ量を中心にして評価する傾向があることだ。例えば、会社では労働時間が短いほど怠惰であり、長いほど勤勉に見られることが多い。しかし、連日長時間働くために疲れが取れず、質の低い仕事を長く行っても意味がない。それならむしろ、より短い時間で質の高い仕事をした方が身体にも良いし、パフォーマンスの質も向上し、今までなかった発想が生まれるかもしれない。物事をなんでも量で評価する傾向は無くすべきだ。また、生物学的に考えてみる。例えば魚は幼い頃の死亡率が高いことから生存数を増やすために多くの卵を生む一方、人間などの哺乳類は、そもそも多くの子供を産むことの負担が大きいことや保護者がいるために幼い頃の死亡率が低いことから、出生数が少ない。このことが生態ピラミッドにおける個体数の均衡を保ち、生態系の安定につながっていることもあるだろう。量と制御のバランスによって生物の生活が保障されているのである。それと同じように、人間社会においても量と制御のバランスが大切なのではないだろうか。
 たしかに量が不足して貧困に苦しむようになっては元も子もない。しかし、本当に大事なのは、量と制御や管理のバランスを保ちながら質を高めることだ。形だけにとらわれず、今の日本に適した方法で発展していってほしい。だから私は、いまだに量を中心に考えている社会は問題だと思う。

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